こういった事例が続き、“自民党は現金給付を嫌う”のような印象を抱いている国民も少なくなさそうだ。なぜ自民党は現金を配りたがらないのか。菅直人元首相は、「子ども手当と高校教育無償化・・・なぜ『バラマキ』が必要か」と題したコラムの中で、〈自民党が「バラマキ」を嫌う理由〉として〈既得権を失いたくない〉と推察している。
〈自民党の政治家にとっての権力の源泉とは「公的な支出の対象を選択する」ことです。平たく言えば「あなたには私の裁量で給付金が出ることになりました」と言うことです。それが票や献金につながるというわけです。
しかし「子ども手当」のように、全員に一律に給付を行うと、政治や行政は誰も「特別扱い」することができなくなります。税金を誰にどれだけ配るかという裁量権が小さくなるわけです。これは、彼らにとっては面白くないことなのです〉(「子ども手当と高校教育無償化・・・なぜ『バラマキ』が必要か」より)
ただし、自民党が現金給付を“忌避”する理由の一つには「現金の給付は消費でなく貯蓄に回ってしまい、景気の浮揚効果が少ない」という考え方もある。
お肉券やお魚券ではなく結局現金で実施された2020年の定額給付金だが、当時の財務大臣だった麻生太郎氏はその後10月の講演で「(個人の)現金がなくなって大変だというのでこの夏、1人10万(円給付)というのがコロナ対策の一環としてなされた」と説明。しかし、給付金の効果について「当然、貯金が減るのかと思ったらとんでもない。その分だけ貯金が増えました」と主張している。
また、児童手当の所得制限については報道各社の世論調査では「撤廃すべき」と回答した人が「撤廃しなくてよい」と回答した人を上回っているという結果もある。
なんにせよ、今回の萩生田氏の発言に批判が殺到しているのは事実。子育て世代への給付は一時的に貯蓄に回ったとしてもゆくゆくは教育費などで取り崩されていくもの。元々「高齢者の医療費を子育て支援に回して」という声は多いし、現金給付で子育てを支えていくという政府の気概こそ安心して子どもを産み育むことにつながるという声は多いのである。