2020年頃からYouTuberのフワちゃんなど、フォロワー数・登録者数の多い人物がすすんで番組にキャスティングされるようになった。彼らは番組の告知などをSNSに投稿し、主に若年層をネットからテレビに少しでも引っ張ってくることを期待された。
起用側も、フォロワー数に価値を見出し始めたのである。その状況下では、フォロワー数が多い局アナは“無料で番組告知をしてくれる専属インフルエンサー”という捉え方もできるようになった。
その流れの中では、SNS投稿に精を出していても、一概に「本業に力を入れていない」と切り捨てられることはなくなった。『めざましテレビ』に出演する女性アナウンサーがダンスを披露するTikTokなどは、明らかにアナウンスメントという枠には入らないものだが、それがスタジオ内で撮影され、番組の公式アカウントで堂々と行われているのがその象徴だろう。
むしろ、局の公式YouTubeでの女子アナのダイエット企画など、制作側も彼女たちをうまく使って視聴数を稼ごうという意図が露骨に表れているものも多い。
本人たちにも仕事としてSNS投稿をする正当な言い分が生まれるようになったし、SNSが伸びれば評価される一因にもなる土壌ができたのがこの数年と言っていいだろう。
もっといえば、その状況下では“アナウンス技術はあまり上達しないが、SNS運用には長けている”アナウンサーも存在するようになってくる。
「すぐに有名になれる」という局アナのうまみ
すると、アナウンサーのその後の人生の指針にも影響が出始める。すでに起こり始めていて、今後も増えていくことが予想されるのが「ある程度、テレビで知名度を上げて自分にフォロワー数がついたならば、今後の人生はインフルエンサーとしてやっていけるのでは――」という、前出の森香澄的な退社の仕方である。
「インフルエンサー」という言葉がこの数年ほどで浸透したものなので、完全に新しい流れに感じられるかもしれないが、テレビ局に高めてもらった知名度を使って、仕事人生の中盤以降はアナウンスメントを放棄するという例はかつても存在した。局アナを辞めたあとに女優やタレントとして成功している例は枚挙にいとまがない。
今後、アナウンサー出身のインフルエンサーが成功することになるかは未知数だが、仮にテレビという場から声がかからなくなったとしても、自分で場を作りながら活動し続けられる、そしてその感覚を持ち合わせているのは、上の世代の元局アナたちとの大きな違いだろう。
特に彼らは有名になるための手段や、知名度を換金する場がテレビだけではないことを目の当たりにしてきた世代だ。ある程度の相場があるテレビ出演のギャラとは違って、ネット上であればその収入に基本、天井はないし、芸能事務所が介在する必要性もない。多くの同世代YouTuberの成功を見ている彼らは、後者により魅力を感じてもおかしくはない。