子役で売れなくても“経歴”として生かせる

 かつての『あっぱれさんま大先生』(フジテレビ系)や、今も続く『天才てれびくん』シリーズ(NHK・Eテレ)など、キッズタレントがメインとなるバラエティー番組も昔に比べて減少した。

「バラエティー番組は、子役にとってさらに狭き門。バラエティー子役はベテラン・中堅の層も厚く、例えば日本テレビの『踊る!さんま御殿!!』などに子役の枠があった場合でも、寺田心くんや村山輝星ちゃんぐらいのレベルの子が求められます。昔のように子どもらしさやかわいさだけでは通用せず、子役にもある種のクレバーさが求められる時代です

左から小栗旬、戸田恵梨香、高橋一生
左から小栗旬、戸田恵梨香、高橋一生
【写真】人気急上昇中の俳優も子役出身!

 熾烈を極める子役の“いす取りゲーム”だが、その子役時代を勝ち抜いてきたからこそ“実力派俳優”に大化けする。

戸田恵梨香さん、小栗旬さん、高橋一生さんなど、現在第一線で活躍している実力派俳優には子役出身者も多い。長いキャリアのなかであまりいい役をもらえなかった冬の時代もありますが、そこで諦めなかった結果、今の確固たる地位があるのだと思います

 また、2003年にハリウッド映画『ラストサムライ』で世界デビューを果たした池松壮亮(32)や、2004年に映画『誰も知らない』に主演し、カンヌ国際映画祭で史上最年少かつ日本人で初めて男優賞を受賞した柳楽優弥(32)など、10代前半から脚光を浴び、今なお唯一無二の個性を発揮し続ける俳優も。

子役時代のイメージを脱却できずに、世間に飽きられてしまうようなケースも多いなか、子どものころとはまったく異なる魅力を獲得して、経験値の高さで活躍を続ける方もたくさん出てきていますね

 また、一度芸能界を離れた後、再度復活を果たす“リターン組”も増えている。

CMで“こども店長”として活躍していた加藤清史郎さんは、イギリスの高校に留学し、帰国後に改めて俳優業をこなす日々。吉川愛さんは、かつては吉田里琴という名前で活動していましたが、2016年に一度引退。芸能事務所のスタッフにスカウトされて再デビューを果たしました。中学・高校の思春期に学業や将来のキャリアプランを考え直し、一度離れるというケースも多いですが、その選択は肯定的に捉えられることがほとんどです

 一方で、過去の栄光にとらわれず、スパッと引退を決意する例も。映画『崖の上のポニョ』の主題歌でも有名な大橋のぞみ(23)は、人気絶頂の最中、学業に専念するという理由で2012年に引退。

「地方のアイドル活動から知名度を高めた橋本環奈さんや、フィギュアスケートと女優業の二刀流で活躍する本田望結さんのようなケースもありますが、芸能界以外に道を見つけて才能を発揮する人も多くいます。子役時代の経験はもはや黒歴史などではなく、自分の実績として堂々と武器にできる時代。YouTubeなどで配信者として活躍したり、実業家として事業を起こすなど、子役の成功というルートが多様化している証しでもありますね

 早々に“セカンドライフ”を過ごす子役も多いと考えれば、2歳から現在まで絶えず芸能界で地位を築いてきた神木隆之介のすごさもわかる。

神木さんは見た目も演技も歌唱も声も、何ひとつ欠点がない。好感度も高くユーモアも備えていて、まさに朝ドラの主人公にふさわしい。みんなの期待どおりに成長してきた稀有な子役の例でしょうね

 史上最強の元子役・神木隆之介の今後の活躍が楽しみだ。

取材・文/吉信 武

木村隆志 テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト、コンサルタント。エンタメを中心に、人間関係、時事などをテーマに出演・寄稿。夫婦関係から職場まで、さまざまな悩みにまつわるコンサルも行っている