効率化とおもてなしを天秤にかけて
その分、人件費が下がっているのであれば問題ないように思えるのだが……、
「私自身の経験でもあるのですが、学生時代に居酒屋でアルバイトしていたとき、店長から“声がけして何杯か多く注文してもらえば、君のバイト代が払える”なんて言われたことがありました。
また、客と話すことによって、再び来店してもらえて、いわゆる常連をつくることもできました。それだけ声がけは、人件費以上の利益をあげることができる大切なものなんです」
タブレットやQRオーダーを活用すれば、店員ひとりが受け持つ客数を増やすことは可能だ。しかし、きめ細かいサービスといったことになると話は変わってくる。
「70代の私の父親は、ひとりでふらっと入った店で店員とコミュニケーションが取れないことが寂しいと話していました。店員にオーダーする機会がないと、料理に合うオススメのお酒がわからないと。
店全体のオススメ料理などはQRオーダーにより表示されるメニューでわかるのですが、食事に合う飲み物の情報が欲しいのに、それがわからない。これからシニア大国になっていく日本において、人とのコミュニケーションを取れる場所がひとつでもなくなるのは、客側にとってデメリットといえるかもしれません」
また、冒頭の女性は“心配になったこと”としてこんな問題点をあげた。
「私はスマホだから、店員さんにやり方を聞いて、なんとか注文できました。ただ、一緒に入った友人はまだガラケーを使っているんですよ。
もし彼女がひとりでお店に入っていたら、今までと同じように店員さんを呼んで注文しなくてはいけないんですよね。そのときに、店員さんから面倒がられるのではないかと思ってしまいます」