政界ではセクハラまがいの扱いを受ける

「2007年の政界引退後に出した回顧録で、“やっぱり女はだめだ!と言われないように”と常にプレッシャーがあったことを語っています。政治信条は“嘘をつかないこと。本音が一番強い”。建設大臣時代、接待を受けた建設官僚の名前を公表したり、国会でのヤジに負けじと反論するなど、率直な言動や行動はまさに“女傑”でした」(芸能記者)

 とはいえ、男尊女卑根強い日本の政界ではセクハラまがいの扱いを受けることもしばしば。最たるものが、2000年11月の衆院本会議で当時保守党の代議士だった松浪健四郎に飛んだヤジだろう。壇上に立った松浪氏が「ちょんまげ野郎!」などのヤジに激昂してコップの水をぶちまけるに至った事件として知られるが、実は松浪氏をキレさせたのは民主党議員が浴びせた「扇とは何発ヤッたんだ!」という言葉。保守党党首の扇さんに松浪氏が気に入られていたことを揶揄する下品な一言だった。

 扇さん本人がいる前でこんな下劣なヤジが飛ぶなど、今のご時世では許されることではない。当時も、自民党の高市早苗議員がコラムで憤りを爆発させていた。

《この野次は、本会議場に居た多くの議員が耳にしていますし、民主党席に近い大臣席に座っていらした扇大臣にはハッキリと聞こえたはずです。女性政治家にとってこれ以上に残酷なセクハラはありません》

《私なら(中略)下劣な野次で女性政治家を冒涜した民主党議員も処分して下さい!」と、その場で叫んでいたことでしょう》(高市早苗氏公式サイトより)

 また、政界の外での一時大きな話題を集めた出来事といえば、2002年に夫の坂田藤十郎が舞妓と密会、バスローブの前がはだけた姿を週刊誌に激写されてしまった“開チン”騒動だ。

「当時国土交通大臣だった扇さんにマスコミが押しかけたんですが、『全く問題ない。(舞妓は)私もひいきにしております。 一番いい子よ』と慌てることなく一蹴。結婚当初から夫の女性問題は容認していることもあり『モテない男を主人に持ちたくない』と、まさに大人な対応でした」(記者)

 女性であったがゆえの嫌な思いにも耐え、政界引退後は舞台に出演する夫のサポート中心の生活を始めた扇さん。結婚60年で夫婦で出演した『徹子の部屋』では、「新婚のようにべったりしている」と夫婦生活を明かすとともに、前年に乳がん手術をした際に夫が付き添いに感謝していた。そんな夫は2020年に他界。公で最後の姿となったお別れの会で扇さんは「縁があって63年。互いに一緒にいられたことが幸せでした」と改めて夫婦生活を振り返っていた。

 女優、政治家、梨園の妻、そして母。「何人分も挑戦させてもらった人生」と生前語っていた扇さんの生き様は今後も語り継がれることだろう。