すべてを消すため東京へ
そんな生活をしていたとき、ネット友達に「そんなに言うなら東京来ればいいじゃん」と言われ、その言葉に背中を押されるように東京行きの夜行バスに飛び乗った。
「もう嫌になったんです。家や親のこともそうだし、死にたいのに死ねない自分のことも。上京すればすべてを投げ出せると思いました。それで、ネット友達に泊めてもらう約束を取り付けたんですけど、いざ東京に着いたら『え、本当に来たの? 無理だから』って拒絶されちゃって、ひとりで東京をさまようことになりました」
あてもなければお金もない。あおいさんは当時はやっていた「家出少女神待ちサイト」という、家出中の少女が寝泊まりする場所や、食事や金銭を援助してくれる男性を探す出会い系サイトを使い、ひとりの男性を見つけた。
「いま思えば絶対にヤバいサイトですけど、そのときは選択肢がなかったんですよね。でも、出会った人が奇跡的にいい人でした。もちろん身体の関係はあったけど、暴力的なことはいっさいなくて食事と寝場所を提供してくれました。それで事情を話したら『とにかくお母さんと話したほうがいいよ』とアドバイスしてくれたんです」
父親が裁判をするときに探し当てた母親の連絡先をこっそりメモしていたため、その番号に電話をかけた。
「連絡を取ったら、お父さんが捜索願いを出してるよって教えられたんです。どうしてもお母さんの家に行きたいと言うと『お母さんは再婚して家族がいるから無理』と拒否されました。実の母親にそこまではっきり言われたらどうしようもないですよね(笑)」
彼女は母に頼み込み、父の説得をしてもらい、東京でひとり暮らしをすることを許可してもらった。母親は、一緒に暮らしてはくれなかったが当座のひとり暮らしの資金を援助してくれたという。しかし、仕送りなどない。ファミレスで働きながら福祉を頼り、家賃と学費を補助してくれる制度を利用して、介護士の資格を取得するための学校に通った。
「区が主催する『介護職員初任者研修』を受けて介護ヘルパーになり、デイサービスに就職しました。おじいちゃんやおばあちゃんとカルタをしたりおしゃべりしたりと仕事はすごく楽しかったです。でも、友達はできないんですよね。周りにいるのは高齢者か先輩の主婦だけで遊び相手が欲しかった(笑)」
社会に出ているとはいえまだ17歳の少女、当然のことだ。職場がある池袋でひとり飲みをしていたとき見ず知らずの女性に声をかけられ、親しくなった。
「その人が筋金入りのホス狂いだったんですね。その人にホストに誘われて、とにかく遊びたかったので簡単にOKしました」