自分のお金はギャンブルで稼ぐ
『文春オンライン』のインタビューでは、
《財布がどんどん厚くなっていってね。でも負けはじめると今度は薄くなっていく。そういう増減がおもしろかったんですよ》
と語っていた。
「ほかにも、《自分のお金はギャンブルで稼ぐ》《お金があるならいくらでも勝負してやる》など、いかにも勝負師らしい発言を連発していましたよ。基本的にお金の心配をする性格ではなく、東京に移転した『動物王国』の運営会社が破綻し、3億円ともいわれた借金を背負ったときも“恨んでも返ってこない”と、地道に稼いで返済したと聞いています」(同・スポーツ紙記者)
ギャンブラーとして“カネ”でヒリつきを味わいながらも執着はしない。潔く、豪快な人柄がうかがい知れるが、一方で繊細な感覚を持ち合わせていたのもまた事実。
「東京の銀座にあるギャラリーで35年以上、毎年、絵の個展を開催していたんです。自著の挿絵を描いており、主に動物をモチーフにしていました。初めのころは白黒のモノクロ画だったんですが、それから徐々に色を足していって。ムツさんの絵の変化を見るのはとても楽しかったですよ」(ギャラリー関係者)
仕事で東京を訪れた際には、このギャラリーにたびたび顔を出していた。
「居合わせたお客さんやスタッフとよく話し、みなさんから次々に質問が飛び出して、いつの間にか動物講義が始まることも。ムツさんも楽しそうに絵の説明をしながら“この動物は、ここにおちんちんがありますね~”なんて、面白おかしく笑いを取っていました」(同・ギャラリー関係者)
'20年から始めたYouTubeでは、ムツゴロウの語呂に合わせ、656回に分けて自らの経験を語り継ぐことを目指していた。志は道半ばとなってしまったが、そのゆかいな人生はいつまでも心に残り続けるだろう。
吉田豪 1970年生まれ。プロ書評家、プロインタビュアー。徹底した事前取材をもとにした有名人インタビューで知られ、取材対象についての知識は本人をしのぐといわれる。著書に『男気万字固め』『続々聞き出す力』など