王室の起死回生を図る“救いの女神”
家庭内のトラブルなら当事者間で解決できるが、フェリペ6世の姉・クリスティーナ王女は、税金詐欺の罪で起訴されたことがある。
「彼女の元夫のウルダンガリン氏は、税金詐欺や公金着服の罪で、'18年から'21年まで禁錮刑に服していました。“王室のお金を使い込んだ”ということで、クリスティーナ王女にも疑惑の目が向けられましたが、結局無罪。とはいえ世間の目は厳しく、王女は国内での居場所を失いました。現在はスイスで暮らしています」(多賀さん)
続出するスキャンダルにより、国民の間では王室廃止論を唱える人も増加した。
窮地に立たされた王室を救うべく立ち上がったのが、フェリペ6世の長女で、17歳のレオノール王女だ。
「王位継承順位が1位で、将来の即位が決まっているレオノール王女は、現行法のままいけば、いずれスペイン軍の最高司令官となります。それに向けて、今年の夏から3年間、スペインの陸・海・空の士官学校に入学し、軍事訓練を受けると発表されました。まさにノブレス・オブリージュ(身分の高い者は、それ相応の社会的責任と義務を負う、という欧米社会の道徳観)です」(細田教授)
慕われる女王になるための段階を踏んでいるプリンセスに対し、国民からは大きな期待が寄せられている。
「レオノール王女の美貌と気品、そして知性は、多くの国民を魅了しています。また、“プチプラファッション”も好評です。スペインを代表するブランド『ZARA』のお手頃価格のワンピースを着こなすなど、母国愛と親しみやすさを体現しています。醜聞まみれの王室の起死回生を図る、“救いの女神”といえるでしょう」(多賀さん)
奮励するプリンセスのためにも、これ以上のスキャンダルが起きないといいのだけど。
多賀幹子 ジャーナリスト。元・お茶の水女子大学講師。ニューヨークとロンドンに、合わせて10年以上在住し、教育、女性、英王室などをテーマに取材。著書『英国女王が伝授する 70歳からの品格』(KADOKAWA)が4月20日に発売される
細田晴子 日本大学商学部教授。マドリード・コンプルテンセ大学歴史学博士。外交官として、在スペイン日本国大使館などに勤務した経験を持つ。スペイン史・国際関係史を専門とし、『戦後スペインと国際安全保障』など著書多数