小規模校とは学部数が少ない大学のこと。

「閉校した16校すべてが1~2学部でした。選べる履修科目が少ない上に、学生数が少ないからサークルの種類も少なめ、と勉強面・学生生活ともに選択肢に限りが出てきます。美術系や栄養学系など専門性の高い学部ならそれでも人気がありますが、他大学でも学べる分野の場合、学生はより多くの選択肢がある大規模校を選びます」

赤字でも廃校にする必要がないケース

 2点目が恵泉女学園大学でも理由として挙がった立地。

「立地は都市型と地方型に分類されます。都市型は他大学や専門学校との競合で負けるパターン。一方、地方型はそもそも大学の需要が少ないために、学生が集まりにくい」

 その結果、生じるのが定員割れ。学生数÷定員数で割り出される充足率で見ていこう。

「入学定員の充足率は入学辞退者が出れば、100%を下回ることは往々にしてあります。ですから定員割れだけで閉校の危険性の有無は判断できません。ただし、学生数の減少が授業料収入の減少に直結するのも事実。私は入学定員充足率60%未満が、経営が危うくなる危険ラインと考えています。実際、16校のうち8校が60%未満でした」

 中には、充足率70%を超えていても閉校した大学も。

「そもそも学校法人は、大学が10億円の赤字でも、系列の小中高が20億円の黒字であれば、法人全体では10億円の黒字になります。この場合、大学が定員割れしていても、廃校にする必要はありません。それを考えると充足率70%超で学生募集を停止した大学は、法人自体の財政状況が悪かったか、将来を見越して早めに損切りしたのでしょう」

 3月に文部科学省は私立大学に対する審査基準の一部を改正。2025年度以降は大学や学部を新設する際、「地域のニーズや18歳人口の推計値」、「近隣の競合校の定員充足率」など客観的なデータで学生確保の見通しを示すことを大学に義務づけた。これには定員割れする大学が増えたため、新設を抑制する狙いがあると考えられている。

「要はマーケティングリサーチを大学に義務づけたのです。とはいえ、民間企業なら事前に需要がどれくらいあるか調査するのは当たり前。これまで明文化されていなかったのが不思議ともいえますね」

 新設抑制策はこれだけではない。

「文科省は、定員50%未満の学部がある大学は学部新設を認めない、という方針も打ち出しました。これらの施策により閉校せざるをえなくなる大学が今後、出ると考えられます。特に2022年に入学充足率60%未満だった30校の大学は、相当な経営努力をしないと厳しいのでは」