支援を活かして上手に子育て
以前は、虐待を行うのは、子育てに関わる時間が長い母親の比率がダントツで高かったが、近年は実父の虐待割合が年々上昇。半数近い41.5%にもなり、父母共に虐待加害者となりうる危険がある。
「問題なのは虐待が『しつけ』と認識されていて、親が自分のやっていることに気づけないこと。しかし、子どもの心身を傷つけ、成長の妨げになっていたらそれはしつけとはいえません」
核家族や希薄な人間関係の環境で、1人で子育てに奮闘している人は、まず周囲に頼れる人を探すことが重要だ。
「人類は長年、子育てを複数人で行ってきました。孤立してするものではないのです。まずは家族で話し合い、足りない分はシッターや公的なサポートなど、さまざまな方面に頼れる人や場所を見つけましょう」
困窮して生活が行き詰まっているなど、具体的な悩みがある場合も、自治体の子育て支援の窓口に問い合わせを。受けられる給付や、必要に応じて専門的な支援の案内も期待できる。
「家族や身近な人に支援してもらったり、公的な機関とつながって助けてもらいましょう。絶対にひとりで頑張りすぎないことが、虐待を未然に防ぐことにもつながります」
昭和のころとは大違い今はNGの虐待行為
●戸外に閉め出す(身体的虐待)
●子どもに夫婦ゲンカや暴力行為を見せる(心理的虐待)
●無視する(心理的虐待)
●きょうだい間で差別をする(心理的虐待)
●幼い子どもを1人で、もしくは子どもだけで放置(ネグレクト)
●幼児の歯磨きや口腔ケアをしない(ネグレクト)
●子どもの健康に関心を持たず、無秩序に菓子や食事をとらせる(ネグレクト)
教えてくれたのは…加藤尚子先生●明治大学教授。虐待を受けた子どもの養育や心理療法について、さまざまな観点から研究を行う。『虐待から子どもを守る!』(小学館)ほか、著書多数。
(取材・文/後藤るつ子)