バスはA少年の指示で中国自動車道から、山陽高速道路へ移動。乗客数人が少年の隙を見て逃走し、その中の1人が110番通報した。バスジャック後から1時間以上経ってからの事件発覚となった。
逃走者が出るたびに、A少年は見せしめとして乗客を刺すという地獄のような状況が続く中、通報直後から大阪府警と福岡県警の特殊部隊SATが動き出す。
前出の中島氏は事件が起こる1か月前まで、大阪府警のSATが所属している第二機動隊にいて、事件を解決することになるSATの隊員とともに訓練を受けていた。
「この事件が起きた時、僕は刑事部に異動していたので、現場に向かったのは後輩たち。だから、よく覚えているんです。ふだんから体力づくりのほか、さまざまな場面を想定した訓練をしていましたからね」(中島氏、以下同)
大阪府警と福岡県警のSAT、広島県警の即席部隊で突入準備
大阪府警のSATはまず広島に行き、福岡県警のSATと広島県警の即席突入部隊と合流。そこで、事件と同じタイプのバスを使ってシミュレーションをしたという。
「解放された乗客1人がすでに死亡して、車内には怪我をしている乗客もいたので、事態は一刻を争っていました。誰が閃光手榴弾を投げ、誰がハンマーで窓ガラスを割り、誰が突入し、誰が少年を押さえて、誰が人質の女児を確保するかなどを決めて、訓練を繰り返した」
事件発覚から15時間が過ぎた4日の午前5時。バスが広島県の小谷サービスエリアに停車していた際に、突入は敢行された。