クラシアンの代表取締役を直撃すると
「相談していた女性上司から、”処分は何もなかった”と聞きました。もしあったとしても、口頭での厳重注意程度で終わっているのだとおもいます」(A子さん)
「私の件は、人事への報告も止められたため、コンプライアンス委員会が開かれたという話すら聞いていません。もしあったとしても、被害者である私へのヒアリングはまったくありませんし、委員会としてきちんと機能しているのでしょうか」(B子さん)
5月上旬、セクハラ、パワハラの処分が正しく行われたのかを聞くべく、クラシアンの代表取締役である今田健治氏の自宅を訪ねた。今田氏に声をかけたが、
「会社を通してください」
と答えるだけ。
──A子さん、B子さんは処分について聞いていないようだが?
「すみません」
「裁判で言います」
──代表取締役としての責任は?
「それも裁判で……」
──セクハラ、パワハラが横行する会社が“くらし安心”と言えるのか?
「……」
口を濁したまま、一礼して自宅に入って行った。
今回の訴訟では、クラシアンとそれぞれの加害者に対して約860万円の支払いを求めている。しかし、彼女たちが戦う理由は“お金”ではない。
「セクハラ訴訟は、手間もお金もかかりますし、正直言って私たちにメリットはほとんどありません。でも、会社が変わらないと、 今後一般のお客様に被害が出る可能性もあると思いました。クラシアンの作業員が一般の方のご自宅にあがるので、そこで性的な事件が起こったりしたら……。第2、第3の私たちが社内だけじゃなくて、一般のご家庭にも出てくる前に“声をあげよう”と」(B子さん)
「弁護士さんの助言があって、お金は請求していますが、そこは期待していません。それよりも、クラシアンにきちんと体制を整えてほしいという思いがありました。これから先、私たちみたいな人が、もう生まれてほしくなかったんです」(A子さん)
本当に“くらし安心”と言える日はくるのか──。