原作と違いすぎるビジュアルや無理やり感に拒否反応も

「原作とはビジュアル的にかなり異なっています。主人公である星矢の着ている聖衣(=クロス/聖闘士が身にまとう防具)のデザインからして大きく異なる部分が多い。また星矢にしてもヒロインのアテナにしてもキャラクターの性格がかなり異なるので、別人に見えてしまうところもあります。ゆえに否定派が出てくる。

 原作者も監修をしているのですが、どうしても違いを受け入れらないファンは出てしまう」(前出・杉本氏)

新田真剣佑が主演する映画『聖闘士星矢TheBeginning』(映画公式HPより)
新田真剣佑が主演する映画『聖闘士星矢TheBeginning』(映画公式HPより)
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 原作は全28巻(全246話)である。

「原作漫画は長大で、換骨奪胎もしくはダイジェストが難しく、2時間1本きりの映画には向かないタイプ。何話も放送されるアニメシリーズならともかく、映画化は非常に難しいです。映画自体は続編に色気を出した終わり方ではありましたが……」(前出・前田氏、以下同)

 長大な原作のどこを映画化するのか、どこを変えるのか、そしてそれはなぜなのか──。

「上映時間=2時間に収めるためにここをカットした、などの理由ではなくて、'23年の今、世界に向けて改めてこのコンテンツを発信するからには、“こういう理由があるからこう変えた(アレンジした)”。そういう新しいテーマを、原作のアイデンティティーと矛盾しないように取り入れる。

 そのためのアイデアを徹底的にひねり出さねばなりません。それが、人気原作を任された映画人が最低限やらねばならないことです。今回の聖闘士星矢はそれができていません。

 逆に、これができていれば、ファンも世間も改変を含めて納得します。それがないから“原作で金儲けかよ”とか“原作愛がない”なんて言われてしまう。当たればデカいが炎上もありうる。それが人気原作の映画化が諸刃の剣と呼ばれる所以です」

 原作ありの実写映画は、とかく原作ファンから、原作との“差異”が語られ、その差異に対しては“原作愛”の有無がやり玉に挙げられる。

「作品に何を求めるかはそれぞれ異なります。原作ファンとひと言に言っても、どれくらい作品を知っているかも差があります。今回の劇場版『聖闘士星矢』で描かれたところは、原作のストーリーの本当に最初の最初の部分です。

 原作で人気のあるエピソードはもう少し後になって出てきます。そのため、そこのイメージで今回の作品を語っている方からすると、厳しい意見になるのだろうと思います。原作の最初の最初を描いた映画なのだと割り切って観るのであれば、それなりに面白い作品に見えてくるのではないかと思いますね」(前出・杉本氏)

 大ヒットとなっている劇場版『SLAM DUNK』は、映画版のオリジナルストーリーを挟みつつも、原作漫画で最も“熱い”部分(試合)に焦点を絞って作られた。

 これが原作序盤にある主人公・桜木花道のヒロインとの出会い、また彼が1人で基礎練習に取り組むところなどが映画化されていたら、これほどのヒットになっていなかったかもしれない。