浅野いにおのイラストを使用した「こんなスポーツ、他にないだろ?DRAMATIC SPORTS. KEIRIN」キービジュアル
浅野いにおのイラストを使用した「こんなスポーツ、他にないだろ?DRAMATIC SPORTS. KEIRIN」キービジュアル
【写真】90年代にJRAのCMに出演したトレンディカップル

芸能事務所の“いいお客さん”に

 この流れに続けと、いまPRに莫大な費用を投じているのがボートレースだ。現在放映中のCMはストーリー仕立てで、出演者は6人。女優の長谷川京子に、歌舞伎役者の中村獅童、イケメン俳優の神尾楓珠、お笑いコンビ・オリエンタルラジオの藤森慎吾、バラエティーで活躍中の若手女性タレント・山之内すず王林という、旬のメンバーだ。

 だが、競馬に比べてマニアックで還元率の高い(3連単のみ)ボートレースはよりギャンブル性が増し、CM出演にあたってはタレント側もさすがに慎重にならざるを得ないのではないかと想像される。現に、長谷川京子が登場した際は業界内からも驚きの声があがったというが─。

「それも古い世代の意見でしょうね(笑)。山之内すずさんは“ボートレースを知って世界が広がった”と積極的に楽しんでいます。藤田ニコルさんもパチンコ好きを公言しているように、いまの20代はギャンブルに抵抗がなく、エンターテインメント感覚。公営ギャンブルは一般企業以上に高いコンプライアンス意識を持っていますし、芸能事務所やテレビ局にとっては大口の“いいお客さん”にすぎません」

 CM効果もあり、ボートレースの利用人数は年々伸び続けている。2022年次の総利用者数は4億6千万人以上、総売り上げは2兆4千億円にも上った。

「とはいえ、いくら派手なCMを打ってもそれだけでは集客につながりません。もともとボートレースは競馬と比べるとあまりいいイメージでなかったことは事実。いま、ボートレース場では有名アーティストのライブに、子ども向けのヒーローショー、ご当地グルメの出店などさまざまな催し物で若者層、ファミリー層の獲得に尽力しており、少しずつイメージが変わってきているところです

 いっぽう、競輪も人気が高まっており、2022年度の総車券売上高が20年ぶりに1兆円を超えたと報じられた。今年度の新CMでは『ソラニン』などで人気の漫画家・浅野いにおがイラスト作画を担当。

チャリロトよしもと公式サイトより
チャリロトよしもと公式サイトより

 芸能人の起用はなかったものの、BSよしもとで平日の夜に毎晩『競輪LIVE! チャリロトよしもと』を生放送するなどメディア戦略に力を入れている。番組MCとして鬼越トマホークレインボーら若手お笑い芸人とグラビアアイドルが登場し、和気あいあいとレースを予想。若い視聴者層を意識した番組構成だ。

競輪とオートレースは競馬やボートレースに比べて競技性が高く、初心者が気軽に予想するには難易度が高い。だからこそ、ただ単に有名人のCMを放映するだけでは集客効果が出にくいんです。競輪では人気お笑い芸人のライブを開催するなど、まずは地元のお客さんに来てもらえるよう地道な努力を続けています」

 ちなみに、今年度のJRAのイメージキャラクターである長澤まさみは、かつて競輪のCMにも出演していた。

「長澤さんが所属する東宝芸能は、正統派の芸能事務所で公営ギャンブルとは真逆のイメージ。にもかかわらず、長澤さんは競馬と競輪どちらのCMにも出演経験があります。彼女が持つ気さくさや親近感が起用の理由と思われますが、もう大手の芸能事務所が公営ギャンブルのCM出演に二の足を踏む時代ではないんです」

 かつて、地方パチンコ店のCMに有名芸能人が出演すれば“落ちぶれた”“都落ち”などと揶揄されたもの。時代は変わったらしい。

「最近の公営ギャンブルCMは、予算も潤沢で作品としても完成度が高い。出演を避ける理由はないでしょう」

 とはいえ、ギャンブル依存症は社会問題のひとつでもある。厚生労働省が2017年に発表したデータによると、ギャンブル依存症と疑われるようになった成人は約320万人。影響力のある人気芸能人らは、はたしてこの事実を知ったうえでCMに出演しているのだろうか……。