昭和恐慌では「娘を身売りする家」が続出
「金融機関は世界中でつながっていますから、アメリカの影響を受けて日本の金融機関でも大動乱が起きる。金融商品が大量に売りに出され、その価値は大暴落。昨今は、多くの人が株や不動産の投資信託などを買っていますから、その資産が失われる可能性がある」
2019年に金融庁は、老後30年間で約2000万円が不足するとの試算を示した。岸田文雄首相も“貯蓄から投資へ”とのスローガンを掲げていることから、老後資金を少しでも増やそうと、新たに金融商品の購入へと踏み切った人も少なくないはずだ。しかし、その資産が泡のように消えてしまうかもしれない。
「影響はそれだけではありません。円高と世界経済の失速によって物の価値が下がるデフレに陥り、企業が続々と倒産。失業も増加するでしょう。どこまで経済が悪化するかは予測がつきません。例を挙げるならば、1927年から起こった昭和恐慌では、1929年にニューヨークの株式市場が大暴落したのを契機に、経済状況はさらに悪化しました。日本は失業者であふれ“大学は出たけれど……”が流行語に。農村部では娘を身売りする家が続出したのです」(森永氏)
仕事を失い、生活が困窮するかもしれない。そして、政府は私たちに負担を強いる。
「経済から軍事まで日本はアメリカにベッタリですから、多額の資金を拠出して全力で支援するでしょう。その原資として増税し、私たちに重い負担を課す可能性はあると思います」(荻原さん)
これらはアメリカがデフォルトしたら……の話だが、将来的に起こる可能性は?
「可能性はあると思いますが、200年に1度ぐらいの確率ですね」(森永氏)
バイデン大統領は、G7後に予定していた外遊を取りやめ帰国した。本当に、この危機を回避できるのか─。
荻原博子 経済ジャーナリスト。1954年、長野県生まれ。明治大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。生活に根差した目線で経済の仕組みをわかりやすく解説する。著書に『5キロ痩せたら100万円 「健康」は最高の節約』(PHP新書)などがある
森永卓郎 経済アナリスト。1957年、東京生まれ。東京大学卒。日本専売公社、経済企画庁、三和総合研究所などを経て、現在は獨協大学経済学部教授。テレビや雑誌などでコメンテーターとして活躍。著書に『長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋』(角川新書)など