お金を配るというのは持続性に乏しい
2月、岸田首相はアメリカから巡航ミサイル400発を約2000億円で購入する予定であることを明かした。これは相手領域内にあるミサイル発射拠点を破壊する“反撃能力”を目的としたもの。血税の使い道には“反撃能力”より先に、必要なモノがあるのではないか。
さらに岸田首相は“異次元の少子化対策”を掲げるが、石破氏はどう考えているのか。
「少子化といっても、統計の数字は都道府県によってまったく違う。'21年の合計特殊出生率が全国で最も高いのは沖縄県で、その後は鹿児島、宮崎と続き、10位に私の地元である鳥取が入っています。
もちろん最下位は東京です。所得が最も高いのは東京なのに、なぜ子どもが生まれないのでしょう。例えば、東京は働く人の帰宅時間が神奈川に次いで2番目に遅いのです。すると“自由になる時間がないから家族を増やすことができません”となる。
一方で、鳥取は大学が少ないため、高校を卒業したら都会へ出て若者が帰ってこない。そのため出生率が高くても、人口減少が起こります。つまり、全国の47都道府県1718市町村それぞれが抱える課題はまったく違うのだから、地域によって政策も変えなければならない」
岸田首相は、少子化対策として児童手当の支給年齢を中学生から高校生にまで延長し、第3子からは月3万円を支給することなどを素案に盛り込んだ。ただ野党からは“バラマキ”という批判もある。
「お金を配るというのは、持続性に乏しい。それをしている間に、各自治体が問題点と解決策を考え、実行しないといけないということです。
竹下登元首相は“ふるさと創生事業”で全国の自治体に1億円を渡して“バラマキだ”と批判を受けましたが、予算委員会で“自ら考え、自ら行うのがふるさと創生なんだわね”と話されました。“失敗も成功もあるだろうが、自分たちで考えてよ”と竹下先生は言いたかったわけです。
今は、当時と違い失敗が許されないところまできています。それだけに、この記事を読んでいるみなさんが、地元の市議や町議に“うちのまちの少子化対策はどうなってるの?”と聞いてほしい。“わかりません”と話す人には二度と票を入れてはいけません。中央政府に任せきりではなく、一人ひとりが“どうすべきか”という意識を強く持つ必要がある。それは楽ではないし、気分もよくないけど、そうでなければ本当の解決はできないと思っています」
官僚や政治家に、任せているだけでは、私たちの血税が必要のないことに使われてしまう可能性がある。未来を担う子どもたちの負担を、少しでも軽くしなければならない。
「私にも2人の娘がいますが、彼女たちから“もう日本はダメだからオーストラリアに行こう”と言われ、私は愕然としました。こう思わせてしまったことが、私たち政治家の責任だと深く反省しています。自分の子どもたち、その次の世代に、このままだとどんな日本が待っているのか、今よりも深く考えていかなければいけません」
石破 茂 1957年生まれ、鳥取県出身。慶應義塾大学卒業後、三井銀行に入行。1986年衆議院議員に全国最年少で初当選。防衛大臣、農林水産大臣、地方創生・国家戦略特別区域担当大臣などを歴任。著書に『日本列島創生論』『政策至上主義』など