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ー 破産してもたいした悪影響はない

 6月8日、回転ずしチェーン『スシロー』の運営会社『あきんどスシロー』が、店内で迷惑行為を行った未成年男性に対し、約6700万円の損害賠償請求を行ったことが報道された。

「今年1月に、岐阜県内のスシローで醤油の卓上ボトルや湯呑みを舐めまわし、回転レーンを流れる寿司に唾液をつけるなどの動画を投稿。SNSを中心に拡散され、大炎上しました。その結果、スシローは客数の減少や株価の下落など、わずか1日で160億円以上もの経済的損失があったといいます。スシロー側は警察に被害届を出したほか、今年3月にこの少年への損害賠償を求めて大阪地裁に提訴していたのです。請求金額は今後さらに吊り上がる可能性があるそう。一方で少年側は、迷惑行為は認めつつも“客の減少は同業他社との競合も考えられる”と反論し、戦う姿勢を示しています」(全国紙記者)

2月に公開されたスシローの声明文(公式HPより)
2月に公開されたスシローの声明文(公式HPより)

 全国に約640軒の店舗を構える大型チェーン店だけに、損害の大きさは頷けるが……。

6700万円というあまりの金額に、SNSでは“よくやった”“当然の報い”と盛り上がる声がある一方で、“結局親が払うんだろうけど、そんな大金用意できるのかな……”と心配する声もあがっています」(全国紙記者)

破産してもたいした悪影響はない

 法律的には、少年の慰謝料を親が払う義務はないが、このような高額の請求を行った狙いはどこにあるのか。弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に聞いてみた。

スシローの狙いは、同様の迷惑行為が再び起こらないようにするためのけん制だと思います。今回は、場合によっては訴訟費用の回収も困難でしょうが、さらなる迷惑行為で客足が鈍れば、それ以上の損害を被ると判断したのではないでしょうか

 この損害賠償請求は、そもそも認められる可能性はあるのだろうか。

訴状等を見てみないことにはどちらが有利とは言えませんが、迷惑行為を行ったことでスシローがいろいろな対応に追われたことは事実ですから、賠償額がいくらになるかはともかく、請求が認められる可能性はあるでしょう。そして、少年の金銭状況によって請求額に制限がかかったり、判決で認められる金額が減ったりすることはありません」(正木弁護士、以下同)

 そうなると、少年の未来はどうなってしまうのか。

最後まで争った場合、“〇〇円を支払え”といった内容の判決が出る可能性があります。これを放置すると、財産を差押えされたり、破産の申立てをされるということが考えられます。ただ、報道されているように少年であれば差押えされるような目立った財産があるとは考え難いですし、破産してもたいした悪影響はないでしょう。ちなみに、賠償金について支払えず滞納することになっても、犯罪には該当しませんので、逮捕されるようなことはありません

 悪影響はないにしても、多額の借金を背負ってしまうのはできれば避けたいところ。なんとかスシローと和解することはできないのだろうか。

和解するのであれば、スシローが少年の懐事情を考慮した結果、賠償額が下がってくることは考えられますが、現状、スシローがこれだけの対応をしていることを考えれば、生半可な内容での和解は難しいのではないかと思います

 少年が舐めたのは、醤油ではなくスシローの“覚悟”だったのかも……。

正木絢生代表弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。慶應義塾大学法科大学院卒業。第二東京弁護士会所属。bayfm『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組『news イット!』(フジテレビ系)などメディア出演も多数。相談しやすい身近な弁護士。YouTubeやTikTokの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、配信中。