わいせつ事件では確固たる証拠がなく、供述に頼るしかないことが不起訴になる要因のひとつになっているという。
相手と同じ「リング」に立つ覚悟
「防犯カメラにわいせつ行為をしていることが、しっかり映っていれば供述に頼らなくても相手の行為を立証できます。でも、わざわざカメラの前でそんなことをする人はまずいません。
一緒に歩いているところが映っているとか、ビルの中に入っていったという間接的な証拠にはなりますが、結局はそこでどんな行為をされたのかを被害者は話さなければなりません」
自分がされた、思い出したくもない行為を自らの口で供述するのは確かに精神的な負担が大きい。
しかし、不起訴となれば犯人を許せない、罰してほしいと思う被害者の感情はどうなるのか。
「処罰を求めるということは、相手と同じ“リング”に上がることになります。第三者がいる法廷の場で、自分がされたことを話す。ある程度、自分も殴られる覚悟やリスクをわかった上で、裁判という場に臨まなければいけないんです。
こういった理由により不起訴が多くなっているのだと思います。被害者側からすれば、処罰をしてほしいけれど、自分がまたイヤな思いをしたくない、という気持ちが上回ってしまうのでしょう」
被害者が再び傷つくリスクと、犯罪者を罰することが天秤にかけられる。被害者がこれ以上イヤな思いをしないための最善策が「示談」だというが、根本的な解決には程遠い─。
お話しを伺ったのは……高橋裕樹●弁護士、アトム市川船橋法律事務所代表。「すべては依頼者の笑顔のために」がモットー。3000件を超す法律相談実績を持ち、相続や離婚といった身近な法律問題から刑事事件、企業法務まで何でもこなすオールマイティーな“戦う弁護士”。裁判員裁判4連続無罪の偉業を成し遂げた実績を持つ。(髙橋の高は“はしごだか”)
アトム市川船橋法律事務所=https://www.ichifuna-law.com/
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