食物アレルギーといえば赤ちゃんや子どもの病気で、生まれながらに食事に苦労するものというイメージが強い。
しかし昨今、大人になって食物アレルギーを発症する人が急増していると、専門医として長年治療に取り組んでいる鈴木慎太郎先生は言う。
増え続ける大人の食物アレルギー
「食物アレルギーは成人しても後天的に発症します。誰でも突然発症するかもしれないのです。
日本における正確な有病率ははっきりしませんが、欧米のデータなどから推測するに、今やおよそ10人に1人はなんらかの食物アレルギーをかかえていて。患者数も、年々増加しています」
食物アレルギーの患者が増加している理由として、花粉症の患者が増えたことが挙げられる。
「花粉症の患者がなる『花粉食物アレルギー』は、花粉のアレルゲンと構造が似ている果物やナッツに反応して、発症してしまうケース。花粉症の患者数が増加しているため、発症する人も増えているのです」(鈴木先生、以下同)
もう一つの理由は、食物アレルギーが成人でもなりうる病気という認識が広まったことにあるという。
「検査を実施する内科医などが増え、隠れたアレルギー患者が浮き彫りになってきているのだと思います。食物アレルギーは、原因となる食物も多岐にわたり、症状もさまざま。まだまだ研究が必要な分野ですが、わかってきたこともあります」
例えば、50代、60代であっても発症し、若い人よりも中高年のほうが、アナフィラキシーショック(※)が起きた場合、重篤になりやすいというデータが。
※激しい全身性アレルギー症状のこと。ときに生命を脅かす
「中高年のアレルゲンとして多く挙げられるのは、小麦を食べたあとに運動をすることで発症するタイプの食物アレルギーや、アニサキスという寄生虫のタンパク質に反応するアニサキスアレルギーです」
子どもの食物アレルギーは、身体の成長とともに症状が出にくくなる場合も多いが、大人の食物アレルギーは、ほぼ治らないという。特定の食べ物が食べられないならそれを避ければいい、と思うかもしれない。ところが、この病気は想像以上につらく、やっかいな病気なのだ。