なかでも、仕事の中心になるのは女優業。今年2月、広末さんは「2022年 第96回キネマ旬報ベスト・テン 助演女優賞」を受賞した際のスピーチで、「映画が人に勇気やパワーを与えてくれると信じて、生きている限り俳優を続けていきたいと思います」などと“生涯女優宣言”していました。
しかも、受賞理由の1つとなった映画『あちらにいる鬼』で演じたのは、奇しくも夫の不倫をとがめずに過ごす妻の役。広末さんはセリフに頼らず表情や佇まいだけで感情表現し、物言わぬ怖さを感じさせるような演技で称賛を集めました。業界内で「女優・広末涼子」の力量は世間の人々が思っている以上に評価されているのです。その演技が記憶に新しいだけに、斉藤由貴さんが不倫騒動後に悪女役のオファーが増えたような現象が広末さんにも起きるかもしれません。
スキャンダルも、女優としての成長につなげられるか
スピーチで「生きている限り」と宣言していましたが、広末さんは幼いころから女優に憧れるなど演じることへの思いが強く、ママタレントや美魔女芸能人としての出演は「制作サイドに求められて応じていただけ」というムードがありました。また、所属事務所は結婚・離婚・出産などの際も、スキャンダルの際も、つねに女優としての成長につなげてほしいというニュアンスの姿勢を見せ続けていました。
一部で「芸能界引退も視野に入れている」などの報道も見られますが、子育てはいずれ終わり、現在の恋心がいつまで続くかはわかりません。キャンドル・ジュンさんが会見で広末さんのことを「心が不安定だった」「過度なプレッシャーや不条理なことがあると豹変する」などと語っていましたが、それすら糧にできるのが俳優の仕事です。
これまでの歩みを見ても、最近のコメントを見ても、やはり戻るべき場所は「女優・広末涼子」なのでしょう。当事者間での問題解決が前提であり、その内容によっては活動の場が映画や舞台などに限定されるリスクも考えられます。しかし、それでも不倫騒動をポジティブにとらえるとするなら、今後はより女優業に専念しやすい環境になっていくのではないでしょうか。
ただその場合は、謹慎明けに会見を開くことが求められるかもしれません。はたして広末さんは復帰に向けてどんな姿を見せ、どんな言葉を語るのか。そんな場面にすら「女優・広末涼子」の振る舞いに多くの人々が注目してしまうのでしょう。
木村 隆志(きむら たかし)Takashi Kimura
コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。