細分化が進むホラー作品
日本独特の“恐怖”は、海を渡り、海外でジャパニーズホラーを意識した作品も作られていくようになる。
「先ほど、『女優霊』についてお話ししましたが、フィルムの質感含め、ローテクだからこその怖さが、この時代のジャパニーズホラーにはあります。特別に何かが怖いというわけではないけど、気持ち悪い(笑)」
世界的大ヒットを記録した『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』('99年公開)も、低予算かつローテクが生み出したホラーの代名詞だ。よしひろさんは、「得体の知れないものに対するゾクゾク感が、ホラー映画の醍醐味ではないか」と続ける。
「そういう意味では黒沢清さんの『CURE』('97年公開)や、大林宣彦さんの『HOUSE』('77年公開)もおすすめしたい“ホラーな”作品。前者は、サイコ・サスペンス・スリラー作品として位置づけられているので、人によってはホラーではないと言うかもしれません。『シャイニング』('80年公開)などのスティーヴン・キング原作映画も、ホラーかホラーじゃないかで意見が分かれるでしょう」
ホラー作品は人気が途絶えることなく今日まで続き、ものすごく細分化されたジャンルになってきた。「だからこそ、自分が怖いと思ったものがホラーでいいと思います」、そうよしひろさんは笑う。
「近年は、Netflixなどの動画配信サービスによって、さまざまな国のホラー作品を目にする機会も増えている。8月には、『ミッドサマー』のアリ・アスター監督が絶賛するチリのストップモーション・アニメーション映画『オオカミの家』が公開されます。すこぶる気持ち悪いと評判なので、この夏をゾッとさせてくれる作品の一つになるはず(笑)」
進化し続けるホラー映画。夏休みは、今昔のホラーにまみれてみるのも一興かも!?
よしひろ・まさみち 映画ライター。音楽誌や情報誌、女性誌などの編集を経て独立。『sweet』『otona MUSE』で編集・執筆のほか、『an・an』『J:COMマガジン』など多くの媒体でインタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブ、イベントなどでも映画紹介を行う