突発性難聴には「3分の1のセオリー」がある
音が聞こえる仕組みは複雑だ。まず耳介が音を集め、中にある鼓膜が振動を感知する。ここまでが「外耳」。
さらにその中の「中耳」にある耳小骨が振動を増幅、奥の「内耳」にあるカタツムリのような蝸牛(かぎゅう)へと伝わって中のリンパ液が振動、すると蝸牛の中の有毛細胞が刺激を受けて電気信号に変換したものが神経を通って脳に伝わり「音が聞こえる」。
しかし音を感じ取って脳に伝える役割の有毛細胞が何らかの原因で傷ついたり、壊れたりすることで突発性難聴となってしまうのだ。
「原因はウイルス、循環の2つの説があるのですが、循環=血流が悪くなることが原因ではないかという説が有力になってきています」
また突発性難聴には「3分の1のセオリー」がある。
「3分の1の人は治療によって聴力が元どおりになり、3分の1はまったく治らない、そして残りの3分の1は半分程度聴力が戻ります。
治療のタイミングで明暗が分かれますが、生活習慣病のある方、特に糖尿病や腎不全といった腎機能の低下がある方はめまいや高度の難聴を起こしやすく、極度な高血圧、動脈硬化、肥満なども治療の効果が低くなる傾向が」
また栄養素のマグネシウムや亜鉛が足りていないことが体調を崩す遠因になることもあるそうなので、毎日の食事に取り入れていこう。
もしも突発性難聴などで片耳が聞こえづらくなってしまったら?
「耳が聞こえづらくなると、QOL(生活の質)が下がってしまうばかりか、中年以降の認知症となる危険因子ナンバーワンなんです。
以前は片耳難聴は補聴器を使わず、聞こえるほうの耳で聞くことが推奨されていたんですが、2018年の研究報告から片耳の軽度~中等度の難聴でも補聴器を使用することがすすめられるようになりました」
聞こえづらくても、音の信号をきちんと脳へ入れていくことが大事。また補聴器は聞こえ方を3か月から、長いと1年ほど調整しなければならない。
「その間に脳も補聴器に慣れて調整されていきますので、きちんと調整ができる認定補聴器専門店へ行くことが大事です。ただ補聴器は決して安いものではありませんので、買い急がず、まずは試してみてください」
日常生活に支障がある人は店舗へ行って、数か月のお試しをすることからトライしてみましょう。