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ー “若手の登竜門”で見事優勝

 かもめんたる・岩崎う大が、注目のお笑い芸人の今後を予想する連載企画。今回の芸人はダブルヒガシ。

“若手の登竜門”で見事優勝

 先日「ABCお笑いグランプリ」という若手芸人の登竜門として名高い大会の44回目が開催され、吉本興業所属の漫才コンビ、ダブルヒガシが優勝しました。

 ABCお笑いグランプリは過去の優勝者にダウンタウンさんやナインティナインさんもいる歴史のある大会で、出場資格はデビュー10年以内のお笑い芸人に限られています。なので、ここで活躍した芸人は今後M-1グランプリなどで活躍する可能性が高く、実際に昨年のABCお笑いグランプリで優勝したカベポスターは、見事にその年末のM-1グランプリで決勝進出を果たしました。今回、私岩崎う大は審査員としてABCお笑いグランプリに呼ばれておりましたので、ダブルヒガシが優勝する様子を目の前で見たのですが、本当に素晴らしい漫才で、エネルギッシュでありながらどこを取っても細部まで面白い漫才でした。ダブルヒガシは、ボケの白いスーツ大東くんとツッコミで黒いスーツの東くんで構成されていて、ボケの大東くんが器用にいろんな人を演じて笑いを起こしていくスタイルです。

 今回のABCお笑いグランプリでいうと、ダブルヒガシが1本目に披露した「大阪のキャッチ」のネタは、大東くんがキャッチの形態模写を交えながら、

「キャッチは存在しなくていい!」

 という持論をまくし立てていきます。普段の漫才から白のスーツを着ている大東くんの強面でチャラそうな雰囲気と彼が演じる大阪のキャッチが絶妙にマッチしていて、会場は爆笑の渦でした。

 実は、このとき僕は会場で笑いながらすごく素敵なお笑い体験をしていたのです。

 僕はその日の朝、東京から大阪入りして、決勝進出者たちのネタを見ていたんですが、後半のほうの出番だったダブルヒガシのこのネタで会場が今まで以上の笑いに包まれる中、

「関西の由緒ある賞レースで、浪速感をほとばしらせる若手漫才師が地元のネタで笑いを起こしていて、東京人の僕も観光客的に大阪を感じながら大いに笑っている」

 という事実に感動していたのです。

 関西人とそれ以外の人では厳密にはあのネタを楽しめる度合いは違うかもしれない、けれども僕が東京の人間だからこそ感じられる面白さもあったと思うんです。

 アメリカ人が感じるアメリカのカッコよさと日本人が感じるアメリカのカッコよさが大枠では同じでも、突き合わせていったら違うのと同じように。

 期せずして、彼らのネタを見ながら笑うという行為だけに収まらず、お笑いが持つ魅力のその懐の深さを痛感していたのでした。

 ツッコミの東くんは、華麗にツッコんでいくというよりも人の良さそうな雰囲気が魅力的で、大東くん演じるキャラクターの被害者として困っている姿が映えるタイプだと思います。

 また、2本目のネタでは少しボケっぽいことをやっていたのですが、2人の雰囲気がまったく違うので、ダブルボケのようなスタイルもハマると思いました。

 そして、ここからは本当に僕の持った勝手な印象ではあるんですが、2人は調子に乗れば乗るほど実力を発揮していくように思えました。

 なので、特に大東くんには調子に乗っていってもらって、その調子に乗った自分と波動の近い面白キャラを自分に降臨させたネタを作っていくことで、ますます調子に乗れる状況が続くと思います。

 あの決勝の日に僕が感じた体験を全国の人に届けてあげてほしいです。

岩崎う大 1978年東京都生まれ。早稲田大学卒。かもめんたるとして槙尾ユウスケとコンビを結成。キングオブコント2013年優勝。お笑い芸人だけでなく、脚本家、放送作家、漫画家として多彩に活躍中