「映像は美しく、圧倒されましたね。内容は、あまり説明がなく進んでいくので、難解な部分もありましたけど、面白かった。大満足です!」
映画館から出てきた男性が興奮ぎみに話すのは、7月14日に公開された宮崎駿の新作映画『君たちはどう生きるか』についてだ。
「引退宣言をした宮崎監督が10年ぶりにメガホンをとったジブリの新作だけあって、世の中を騒がせる話題作です。ただ、事前の映画宣伝はいっさいナシ。だから、公開されたことを多くの人が知らず、SNSでは《映画館はガラガラ》なんて投稿もなされました」(映画誌編集者)
しかし、公開から4日間でその興行収入は21・4億円を突破。これは総興行収入312億円という国内で歴代2位の記録を持つ、'01年公開の映画『千と千尋の神隠し』の初動4日間を超える数字だ。
「空席が目立ちましたけど、平日の昼間に見に行ったからかな。私もテレビのニュース番組で封切りされたことを知りました。ネットでも盛り上がっていましたから、そこで公開を知った人も多いと思います」(同・男性、以下同)
木村拓哉、柴咲コウ、木村佳乃らが起用されたのは
驚くべきは、その情報管理の徹底ぶり。映画のパンフレットは、公開後の販売。声優として出演するキャストの情報も、公開されるまで明らかにされていなかった。
「やたらとカッコいい声の人がいたので、アニメ『機動戦士ガンダム』のシャア役などを担当した池田秀一さんかと思ったら、エンドロールで木村拓哉さんの名前があってビックリ。ほかにも柴咲コウさん、木村佳乃さん、菅田将暉さん、あいみょんさん、風吹ジュンさん、火野正平さんなどの豪華キャストが名を連ねていました」
映画が公開されると、出演した人気俳優たちが祝福する声をSNSに投稿。これがさらに話題を呼んだ。
「さまざまな“仕掛け”を駆使し、宣伝費をかけずに完全新作を封切らせた前例を作ったといえるでしょう。SNSでは、莫大な宣伝費を使う広告代理店に対しての不要論が散見されています」(前出・映画誌編集者)
とはいえ、公開日がいつなのかすら、多くの人が知らない状況だった。本当に宣伝は必要ないのだろうか。
「ネットニュースでは大手広告代理店に動揺が広がっているとかピンチだとかいろいろ書かれていますけど、そんなことはありません(笑)。今回の手法が成功したのは、巨匠・宮崎駿監督の新作だったためと考えています。公開されれば放っておいてもテレビで取り上げられる。なおかつ根強いファンも多く、SNSで話題となるのは必然でしょう」
そう話すのは、大手広告代理店関係者。話を続ける。
「公開前に映画の宣伝を行うのは業界の常識ですが、それは動員がなければ上映が早々に打ち切られてしまうため。仮に今後もジブリと同じ手法を取ろうとすれば、確実に失敗すると思います。ジブリもいっさい宣伝をせず、不安だったはず。だからこそキャストの大部分に人気俳優を起用した。木村拓哉さんや菅田さんで話題作りをする、宣伝代わりの“保険”としたのでしょう」
歴代の興行収入を塗り替える、新たな記録を打ち立てられるか!?