遺族が遺骨を引き取ってくれたとしても、お墓の場所がわからず無縁遺骨になることもある。そういった状況に陥りやすいのは、家族で最後に亡くなった人だという。
手軽にできるのはエンディングノートを残すこと
「例えば、夫婦でお墓を用意していたのに、夫に先立たれ残された妻が亡くなったあと無縁遺骨になるケースです。生前用意したお墓の場所を誰にも伝えていなかったため、夫と同じ墓に入れずに納骨堂行きに。
ひとり暮らしの高齢者が亡くなると、市区町村が葬儀を行い一時的に遺骨を保管はしてくれますが、一定の手続きをしておかないと納骨まではしてくれません」
昔は、親族で墓所がまとまっていたり、お盆にお墓参りに行ったりすることが普通だったが、核家族化が進み、離れて暮らす人がほとんど。お墓の話題が出ることも少なく、“親戚であっても墓の場所を知らない”人も多いという。
「残された親族に引き取る意思があっても、結局自治体が預かることに……という場合もかなりあります。私が聞いた実例では、ある自治体に、骨壺をかかえた50代の男女が『伯母の遺骨を引き取ってほしい』と相談に来たケース。一度引き取った遺骨を持ち込んだ理由は、お墓の場所がわからなかったからでした」
故人である伯母さんには先に亡くなった夫がいたが、その遺骨は自宅に残っていなかった。どこかに夫婦のお墓があるはずだが、親族の誰ひとりその場所を知らなかったために無縁遺骨となったのだ。
では、自分や配偶者が無縁遺骨にならないためには、具体的にどうすればよいのか。
「いちばん手軽にできるのは、エンディングノートを残すこと。エンディングノートは自分の死後、残された家族が困らないよう、資産や財産、スマホのパスワードにいたるまで必要な情報を書き出すものです。そこに生前準備しておいたお墓の場所を書いておけば、無縁遺骨になる可能性をぐっと下げられます」
ほかには、公共サービスを利用する手も。
「神奈川県横須賀市や愛知県名古屋市では、25万円前後を支払って、自分の死後の火葬・納骨や公共料金の解約などを行ってくれます。ただ、市によっては、『預貯金額が一定額以下』など利用条件が厳しい場合も。費用はかかりますが、民間企業の終活支援を利用する人も多いです」
自分が住んでいる地域ではどういった終活支援が受けられるか確認するのが大切だ。
また、親族から無縁遺骨を出さないためにできることは、兄弟や親戚同士でお墓はどうするかなどの情報を共有することに尽きる。
ただ、前述のとおり死後のことは家族や親族が担うというこれまでの認識は薄れてきているので、まずは自分の死後のことを考えてほしいと小谷さん。
「自分の意思を元気なうちに表明しておくこと、それを死後に代弁してくれる人や組織を見つけておくことが大切です。それは、友人はもちろん自治体、NPOなど。頼れそうなところをチェックし、早めの対策を」
取材・文/オフィス三銃士
小谷みどりさん シニア生活文化研究所所長のほか、淑徳大学、奈良女子大学などで教壇に立つ。博士(人間科学)。専門は死生学。著書に『ひとり終活』(小学館新書)、『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓』(岩波新書)など。