「乃木は別人格を“F”と呼んでいましたね。私は考察班じゃないから深く考えていませんが、“おそらくA、B、C、D、Eがいるのかな”など、いろんな想像はできますね。堺さんの演技力という部分ではまったく心配していませんし、むしろ陽も陰も演じ分けられる堺さんに驚かされたいなと私は思っています」

 さらには阿部寛二階堂ふみ……まるで大河ドラマのような豪華さと言われているキャスト陣。公式サイトの“登場人物”には40人超の俳優の顔が並んでいるが、役名まで明記されているのは25人(第3話終了時点)。主要キャストである松坂桃李の出演は合間に流れる『アタックZERO』のCMのみで、役所広司&未発表キャストだった二宮和也も1シーンの登場にとどまっている。

「まだ出てきてない人、いっぱいいますよね。大物を呼びすぎた結果、それぞれの俳優の見せ場がなくなる懸念はありますね。例えば、昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』もかなりのキャスト数でしたが、それぞれに見せ場と役割があり、物語の根幹に全員が必要とされていた。そして納得のいく形でちゃんと収束しましたよね。もちろん、1年をかけてそれをやった大河ドラマと比較するのは酷ですが」

 『VIVANT』は福澤克雄氏が原作・演出を手掛けている。堺とタッグを組んだ『半沢直樹』('13年・'20年)で42.2%の最高視聴率をたたき出すなど、数々の日曜劇場をヒットさせてきた。

『VIVANT』はややこしすぎるかも?

「福澤さんは来年の1月で60歳の定年を迎えるそうなので、いわば卒業制作ですよね。過去の日曜劇場に出演した俳優が集結しているわけです。そして、過去の役柄への先入観もおのずと働きますよね。“今回は迫田孝也を信じていいのか?”みたいな(笑)。とはいえ、堺さんだっていつまでも『半沢直樹』の話をされるのも嫌でしょうし、視聴者だっていつまでも『半沢直樹』を求めているわけではない。『半沢直樹』くらい熱狂する作品が欲しいだけであって」

 では『VIVANT』はそんな熱狂を生み出せそうか?

「うーん。『VIVANT』はややこしすぎるかもしれないですね。『半沢直樹』はとてもドメスティックな、ひとつの銀行の中の話なのでわかりやすかった。でも『VIVANT』はひとつの企業の話ではなく、国家、テロリスト、闇の組織……など、だいぶ大風呂敷を広げているように感じます。これだけの要素をたった10~12話程度の1クールで、納得の行く終わり方ができるのかどうか。スケールダウンとともに、そこが懸念材料かもしれません。とはいえ、そんな懸念すら抱かせないドラマはたくさん放送されていますけどね(笑)」

 第4話の放送は8月6日。誰が出てきて、どう展開していくのか?