またテレビを持たない若者層も、TVerのアプリを通してテレビ番組を視聴しており、若者層とテレビ番組の接点にもなっている。
配信プラットフォームの観点からTVerを見ると、動画配信プラットフォームの熾烈なシェア争いからは、一線を画するポジションにいる。それは、有料と無料のサービス形態の違いによるところが大きい。
TVerのコンテンツはすべて無料で見ることができるため、サービス特性という点では、同じく無料で視聴できるYouTubeやTikTokに近い。その一方でYouTubeやTikTokのような、一般人も含めて発信できるユーザー投稿型サービスとは異なり、TVerが配信するコンテンツはすべてテレビ局(後述の一部オリジナルを除く)が制作したものであるため、内容面での差別化も図れている。
またTVerは、配信プラットフォームでありながら、テレビ各局からの出向社員が運営に携わっている。現在はスタッフ160人のうち40人ほどがテレビ局と広告代理店からの出向者で、配信プラットフォームとテレビ局、両方の血が流れているのだ。
テレビバラエティ本番中に配信ドラマを撮影
そんなTVerは初のオリジナルドラマ『潜入捜査官 松下洸平』を9月5日から配信する。これまでにオリジナルコンテンツとしては、さらば青春の光・森田哲矢と若槻千夏がMCを務めるトークバラエティ『褒めゴロ試合』、さまざまな業界のトップランナーが先生となり熱い授業を届ける教育番組『TVerで学ぶ!最強の時間割』の2本があった。
そこにドラマというテレビ番組としても花形のコンテンツ制作に乗り出した。その仕掛け人が、TVerの小原一隆氏だ。フジテレビ局員であり、ドラマ『鍵のかかった部屋』『失恋ショコラティエ』や映画『ひるなかの流星』『劇場版ラジエーションハウス』などのプロデューサーを務め、2021年からコンテンツ担当としてTVerに出向している。
小原氏は「在京阪テレビ局の社員が集まるという、なかなかない仕事環境にいるので、全局で共同作業をしてオリジナルドラマが作れないかとずっと考えていて。社内にもそういう雰囲気がありました」と企画立案当初を振り返る。