とりわけドラムのキャラが、演者も新鮮だし、愛くるしい仕草で人気を集めている。序盤、乃木や野崎を執拗に追い詰めていたバルカ警察のチンギス(バルサラハガバ・バタボルド)が野崎と協力する流れもたまらなかった。事前に出演発表だけされ、いつ出るかと引っ張りに引っ張った松坂桃李は、乃木と同じ別班の一員で、乃木とバディもののムードを漂わせる。

 なによりしびれるのは、当初、乃木を守る立場だった野崎が乃木を追う展開だ。共に日本を狙うテロ組織テントを追う同士ながら、手段を厭わない乃木と、もう少し節度のある野崎、演じる堺雅人と阿部寛、日本のエンタメ界の2大人気俳優が対峙することになりそうな展開にも胸弾む。

 乃木の名が「憂」で野崎の名が「守」であるのも、2人の属性をわかりやすくしている。『VIVANT』後半戦は、別班対テントの乃木父子の確執に、公安がどう絡むか。堺、役所、阿部の演技バトルが期待できそうだ。

2面性持つ役柄で評価されてきた堺雅人

 そもそも、堺雅人がこれまで高く評価された作品は、どれも善人寄りではなく、ちょっと毒のあるキャラを演じたものだった。出世作『半沢直樹』(2013年、2020年 TBS系)も「やられたらやり返す」「倍返しだ」と徹底的に復讐する者。『リーガルハイ』シリーズ(2012、2013年 フジテレビ系)の弁護士・古美門研介は優秀ながらお金のために仕事をしていて、世の中を斜めに見まくった性格のひじょうに悪い人物。

 半沢は復讐する理由が父の敵なので応援できるが、古美門は欲望が原動力なので取り付く島がない。だが堺の魅力は、そういういいところのない、実際いたら絶対にいやな人物を、おもしろおかしく造形できることなのだ。

 そして、堺はかつて『JOKER ジョーカー許されざる捜査官』(2010年 フジテレビ系)で裏の顔を持つ役を演じていた。昼間はうだつのあがらない「仏の伊達さん」と呼ばれている主人公は、夜になると「お前に明日は来ない」という物騒な決め台詞を吐き、犯人を追い詰め独特の裁き方をするという役で、この頃から堺のギャップの魅力は発揮されていたのである。