娘の犯罪に親が協力するという前代未聞の事件が起きたのは7月頭のこと。
「北海道・ススキノのラブホテルで男性の首なし遺体が発見され、7月下旬に20代の女性が殺人の容疑で逮捕されました。医師の父親とパート勤務の母親も同時に逮捕され、全貌は明らかにはなっていませんが娘の犯行を親がサポートしていたと報道されています。親は子どもを正しい方向に導かなければいけないのに、間違った方向に進む子どもを手伝うなんて。あってはならないことですが、わからなくもないと反応する親がいるのも事実です」
とは、都内の心療内科医の女性だ。近年、“娘が怖い”といった内容の相談が増えているという。
「相談に来る方々はそれぞれケースは違いますが、成人した娘に、自分のこれまでの育て方を責められている、ということが共通しています」
子育ての現場で今、何が起きているのだろうか。都内に住む宮田智子さん(58歳・仮名)は、31歳になる娘の扱いに悩み、心療内科を訪れたという。
「娘の顔を見ると、怖くて動悸がするんです。私は長女と長男の3人暮らしで、主人は2年前に亡くなりました。動悸がするようになったのは主人が亡くなってからです」
いきすぎた教育をしてしまったと後悔
もともとは親の言うことを聞く娘だったという。
「聞き分けがよくて、習い事の音楽スクールでも優秀な成績を収めて親バカになってしまい、スパルタ教育だったかもしれません。結果、コンテストに入賞するなどしましたが、20代のころからうまくいかなくなり、親の教育のせいで満足な青春時代が送れなかった、青春を返せと言い始めたんです。たしかに友達と遊ぶよりも習い事を優先させて、友達付き合いを制限したこともあったのは事実です」
娘を思うあまり、行きすぎた教育をしてしまったと後悔したという。
「最初は“ごめんね”と素直に謝りました。娘は“だったら私の言うことをちゃんと聞いて”と主張して、私たち夫婦もちゃんと娘の言うことを聞くようにしました。気分の浮き沈みも激しく、一緒にテレビを見ていても急にスイッチが入って、母親である私を罵倒してきたりします。最初は叱っていたのですが、ワーッと言われるうちに、“自分が悪いんだ、自分が我慢すれば”と思うようになって……」
洗脳状態に陥ったという宮田さん。免許を持たない娘のために送迎はもちろん、夜遅くに都内の自宅から箱根まで迎えに行ったこともあるという。
「すべては私たちがモンスターをつくってしまったから。ススキノの報道を見たときに人ごととは感じられず、心療内科に相談することにしたんです」
同じように育てた長男は、親を責めることもなく社会に出ているという。
前出の心療内科医は、
「宮田さんのケースに限らず、娘に特化して怖いという親御さんが多いです。
それは、男性に比べて女性は内に怒りが向きやすいから。憎しみの対象も男性側が不特定多数の世間に対して、女性は近い人に向く。親を責める女性は、自分のことが嫌いな場合が多い。それを“製造責任者”である親に反映する」
と、分析する。娘をモンスターにしないためにどうしたらいいのか。
「娘と自分は別の人間だという線引きをすることです。過度な教育をする親や、溺愛する親、友達親子など、すべて子どもに自分を投影しすぎている傾向にある。小さいうちから、子どもはちゃんと別の人間として扱うべきです」
モンスターをつくり上げる前にできることがある。