ただ単に声を出さなければいいという訳ではない
ただ単に声を出さずに行えばいいというわけではなく、 “非手指動作”が不可欠だという。
「日本手話は、手の動きだけではなく、口の形や視線、うなずき、眉上げなど、複数の動きを同時に行います。佳子さまの非手指動作は素晴らしかったです。“非手指動作を使われた初めての皇族”として歴史に名を残されでしょう。ろう者の手話は“表情が豊かだね”と言われることがあるのですが、そこには言語的な文法が含まれているのであり、“表情が豊か”とは別ものなんです。佳子さまの手話には、非手指もしっかり現れていらっしゃいました」
50代の女性ろう者は、目にうっすらと涙を浮かべながら熱弁してくれた。
「英国王室のダイアナ妃は、ずっと声を出さない手話をされていました。だから、イギリスのろうコミュニティの中で彼女の人気はものすごく高いんです。日本人である私はそれを羨ましく思っていましたし、いつか日本の皇族の方が、ろう者が自然に使っている日本手話を使ってくださるといいなと願っていました」
さらに、先の男性ろう者はこう続ける。
「私たちろう者に“声つきの手話をやってくれ”なんて誰も言わないですよね? なのに、聴者が手話をしていると“声をつけながらやって”と言われる風潮はずっとあります。やはり皇族の方は非常に影響力が大きいので、佳子さまが固いご決意のもと、声を出さずに手話をしてくださったことは、日本手話を第一言語としているろう者として、心からうれしく思っています」
手話への正しい認識が、きっともっと広がっていくだろう。