松岡きっこの「人生の分岐点」

 一方、妻の松岡きっこさん(76)は人生の分岐点は「結婚」だった、ときっぱり。

「私は谷さんと違って、あんまり苦労してこなかったの。子どものころから劇団に入ってお芝居を始めて、面白いなと思っているうちに気づいたら女優さんになってたから」

 俳優としてステップアップする中、『キイハンター』で谷さんと共演し交際へ。結婚を考えるようになるが……。

「谷さんから、『女優を続けるなら結婚はしないほうがいい』と言われたんです。たしかに役者同士って難しいんですよ。相手の作品を見て『自分だったらこうする』なんて言ったらすぐケンカになっちゃう。実際に離婚している方も多いでしょ。でも私は谷さんと結婚したかったから、女優をやめたんです」

 結婚後は演技の仕事は受けず、バラエティーなどに仕事の軸足を移したが、「もしあのとき、女優を続ける道を選んでいたら」と、考えることも。

「今この年齢になった自分が、どんな女優になっていたかなって想像することはあるわね。厳しい世界だから生き残っていられたかはわからないけれど。でもきっと女優の仕事を一生懸命したんじゃないかしら。女優って本当に面白い仕事だもの」

 それでも選択に後悔がないのは、結婚によってきっこさんの人生に多くのプラスがもたらされたからだ。

「料理ひとつまともにできなかった私が、いろんなことができるようになったのは間違いなく谷さんと結婚したおかげ。だから今は主婦として、谷さんが出る作品にときどき文句言ったりするのが楽しいのよ」

谷隼人(たに・はやと)●1946年生まれ/松岡きっこ(まつおか・きっこ)●1947年生まれ。ドラマ『キイハンター』での共演がきっかけで'81年に結婚。バラエティー番組での共演も多く、芸能界のおしどり夫婦として知られている。

(取材・文/中村未来)