実はインドア派自筆の会報が話題

 自らをインドア派と称する松村さん。若いころから茶道と書道を続けている。

「茶道は20年くらい前に『役者として役に立つ』と言われたので、自分で先生を探しました。この先生ともとてもよい出会いで、職業や立場は関係なく『一期一会』のときを味わうという場がとても心地よく、いつも元気をもらっています」

 また、書は東京書作展で内閣総理大臣賞を受賞するほどの腕前である。

「書のきっかけは祖母でしたね。年賀状がうまく書けると褒めてくれて、褒めてもらいたくて頑張って書いたのが原体験でした。僕にとって、祖母は本当に全能の神みたいな存在だったんです」

 ファンクラブ会報は「手書き」でのエッセイを届けていることもファンにはうれしいところだ。

「普通はプロのライターさんにお願いをするところなのでしょうけど、当時の社長に『自分で書いてみない?』と言われて始めて、気づけばもう42年になります。原稿用紙で20枚くらいで、しかも僕の駄文なので、毎回できあがりを見るとぞっとします。芸人のバカリズムさんが会報を見て『獄中の手記みたい』とコメントしてくださって、さすが才能がある人だと思いました(笑)」

 俳優としてだけではなく、2022年には事務所社長に就任した松村さん。

「社長として裏方や事務の仕事に触れるようになって初めて、いかに僕が何も知らずに楽に仕事をさせてもらっていたか実感しました。マネージャーや経理がどれだけ大変なことなのか、例えば舞台のチケットひとつとっても、今まで丸投げしていたことをやってみるととても大変で。感謝の気持ちがものすごく大きくなりましたし、仕事への取り組み方も変わったと思います」

 俳優、歌手、茶道、書家、そして社長業……活動の幅は驚くほど広い。

「いろんな仕事をいただけて、ありがたい限りです。でも、還暦を機にいま一度初心に返って、一から“貪欲”に進んでいきたいです。貪欲な松村をちょっとでも気にしていただけたら幸いです!」

 不良役のイメージで止まっていた読者のみなさん! 松村さんは今めちゃくちゃ好青年……もとい、推しがいのある「好イケオジ」になってますよ!

松村雄基(まつむら・ゆうき)●1963年11月7日東京都生まれ、俳優。1993年ごろから活動の中心を舞台に移し、年間最大6本もの舞台をこなす。現在、『祖国への挽歌』(東京・俳優座劇場)に出演中。今年11月・12月には主演ミュージカル『クリスマス・キャロル』に出演予定。クラシックコンサートの司会者や、シャンソン歌手としての一面も。

(取材・文/高松孟晋)