最近では配偶者の死後、スマートフォンにアクセスできず、重要な情報にたどりつけないことも多く、問題になっているという。
「スマホの内容はプライバシーの最たるものですから、生前から開示し合うのは難しいもの。ですが、例えばiPhoneには死後、自分のスマホにパスコードなしでアクセスのできる人を登録できる設定があります。私も妻とは設定し合っています。
銀行も通帳を廃止にする流れになっていますし、証券会社もネット証券を利用する人が増加。デジタルの金融情報をどうやって共有し合うかは、夫婦で今すぐにでも話し合いが必要です」
島根さんがさらに強く推奨するのが「遺言書」。エンディングノートには法的効力はないが、形式にのっとった遺言書を夫に書いてもらえるなら安心だ。
「多くのご主人が願うのは、自分亡き後、妻にいきいきと豊かに生きてほしいということでしょう。
核家族化が進み、夫婦が最小単位とされる今の時代、妻の生活を守るためには生命保険の受取人を妻にするのはもちろん、遺言書に妻を最優先とした相続を書き残しておくと夫婦共に悔いのない終活ができると思います」
もっとも簡易な形式の遺言書の書き方の例をあげたので、参考にしてほしい。
次から紹介するのは、島根さんが実際に相談に乗った5つのケース。勘違いや確認不足、最低限の法律の知識がないことによって、苦境に立たされてしまったシニア妻、それぞれのトラブル例を追っていく。
ポイントを押さえれば簡単『遺言書』の書き方
□全文を自筆で書く(財産目録は除く)
□不動産は登記事項証明書のとおりに記載
□作成年月日は必ず書く
□忘れずに自筆の署名と押印をする
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がある。ここでは、一番手軽に作れる「自筆証書遺言」の書き方を紹介。
遺言書は「遺言書本体」と、住宅・土地、預貯金などどのような財産があるのかをまとめた「財産目録」をセットで準備しよう。
右の遺言書のように「妻に次の財産を相続させる」と土地や建物を明記した遺言書を夫が生前に作っておけば、「ケース4」のような相続トラブルは起きにくい。※自筆証書遺言の本文は自筆で書かなくてはならない