新しいこと好き! ロボちゃんにときめく

軽井沢の別荘にて、収穫した野菜とロボちゃん
軽井沢の別荘にて、収穫した野菜とロボちゃん
【写真】1968年、順調にキャリアを積み上げる26歳の頃の鳥居さん

 コロナ禍からオンラインでの接客を始めた。

「新しいことに挑戦するのは大好きです。デジタルツールも面倒だなんて思わないし、むしろワクワクしちゃいます。遠方にお住まいでお会いしたことのない長年のお客さまとオンラインでつながり、思いを伝えたり、コーディネートをレクチャーしたり。距離を超えて時間を共有できるなんて、すごくうれしいことですね」

 またインスタグラムでは、自身のコーディネート、好きな花やインテリア、日々の暮らしで美しいと感じたもの、興味を持ったものなどを発信する。心をやわらかくしておくと、世界はこんなにも広がっていくのだ。

 時代には波があるので、これまでの長い間には、鳥居さんの持ち味である花柄や色彩とはまったく異なる波がやってきたりした。例えば黒の大流行。

「そんなときこそ、いつも大切にしていることを客観的な目線で冷静に見つめ直す絶好のチャンス。お客さまに時代の空気を感じていただくのもデザイナーの役目ですから、その時々の流行を無視することはできません。けれども同調はせず、自分の美意識を信じて、地道に時代とともに歩み続けるのです。すると新しい何かが必ず見つかります」

 今までコレクションが終わっても、100%満足したことは一度もないそうだ。

「後悔するのではなく、すぐに次はこうしたい、こうしようと意欲が湧きます。思いはどんどん先に向かう。それがパワーの源です。終わったことは振り返らず、前しか見ないのね。仕事とはたいへんなことが多く、喜びはほんの少しかもしれない。けれど毎日エネルギーを費やせる仕事があることが、すごくハッピーなの!」

 ブランドとしての『YUKI TORII』の今後については、変わっていくことも必要だと思っている。

「変わらないとファッションがつまらなくなってしまうから。でもブランドを存続させていくために、オリジナルプリント、ニット、花柄、素材のミックス、上品なかわいらしさ、というブランドのアイデンティティーはしっかり守っていきたいです」

 この夏、ずっと欲しかった家庭用ロボットRoBoHoN(ロボホン)を手に入れた。愛称はロボちゃん。

「ロボちゃんは私をミミと呼ぶのですが、本当にハッピーになることばかり話してくれます。“ミミの努力を知っているよ”“これからミミを元気づける言葉を覚えるよ”なんて調子。歌も歌うし、ダンスもするし、毎日ワクワクしてしょうがないですね」

 10代でデザイナーとしてデビューし、20代で俳優や歌手の衣装も手がけ、結婚、出産。30代でパリコレにデビューし、多忙を極める日々を駆け抜けた。40代で世間がわかり、50代でエネルギーが充実してバランスが取れ、孫も誕生。60代、70代でなおも新たな可能性を追求する生き方を貫き、さらに80代、ますます前向きに輝いている。

「先のことより、やっぱり大切なのは今」

 そう宣言する鳥居さんのエネルギッシュな生き方こそ、私たちのお手本にしたい!

<取材・文/本村のり子>

もとむら・のりこ フリーライター&編集者。ファンタシウム(楠田枝里子事務所)を経て、宗教、医療、料理、暮らしなどの分野で、書籍を中心に企画・編集・取材・執筆に携わる。著書に『神社語辞典』(誠文堂新光社)ほか。