同氏は自分の仕事についてこう説明する。「性加害の物的証拠を見つけるのは難しいことが多い。しかし、調査しているうちに、証言がすべて似ている被害者、メールのやりとり、目撃者の証言など、ある時点でストーリーの確かな基礎となる要素を見つけることができる。そして、その被告発者と対峙する。すべての要素を揃えることができたら記事を公表する」。
フランスでさえ、性暴力はまだそれほど深刻に受け止められていない。「告発の73%が捜査されないということは、性犯罪者が依然として逃亡し、自分は無実だと主張し、被害者を苦しめていることを意味する」と彼女は嘆く。
日本にとって今回のジャニーズのスキャンダルは、性加害・被害問題報道のあり方、そして、メディアが自らこうした罪に対して黙認という形で加担した場合、どうするべきかを考える契機になっているはずだ。
ジャニー喜多川による性加害問題を取り上げ、今回の騒動のきっかけとなったBBCドキュメンタリー『J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル』を監督であり、調査を主導したメグミ・インマンはこう話す。
「このドキュメンタリーの影響には圧倒された。私たちが波及効果を起こしたのだ。この話は長い間主要メディアでは取り上げられなかったが、ソーシャルメディアが大きなうねりとなった」と彼女は振り返る。
インマンは日本がまだ性に対して後ろ向きであることに気づいている。「日本ではセックス自体がタブー視されているように感じる。日本で『セックス』という言葉を口にすることはほぼなく、『エッチ』という言い方をされる。だが、セックスについて率直に話さなければ、性的虐待のような複雑な問題についてどう話すことができるのかわからない」。