インプラント治療のメリット&デメリット

メリット

・ほかの治療と比べ周辺のを削らないで済む

・入れのようにつけ外しが必要ない

・入れのように噛む力が失われない

デメリット

保険適用外のため、治療費用が高くなる

・外科的手術が必要になる

・メンテナンスを含め、治療期間が長くなる

技術面のトラブル、過去には死亡事故も

 正しい知識を持って、研修を積めば歯科医にとってインプラント治療は難しいことではない。しかし、人件費削減のため、十分な技術を持たない歯科医によるトラブルも中にはあるようだ。

「埋め込んだ際にサイズの合わないねじ(人工根)を使用したことで、何かの拍子に折れて、茎の中に折れたねじの半分が残った状態になってしまったという事例を聞いたことがあります」

 術後にいちばん多い後遺症はインプラント周囲の茎や骨が細菌に感染する「インプラント周囲炎」だ。

「この病気は手術時に、器具や設備が不衛生であったり、手術前後のメンテナンスや清掃が不十分だと起きることがあります。症状が悪化すると、周病と同様にインプラントを支える骨の破壊が進み、しまいには抜け落ちてしまうことも……」

 インプラント治療は手術が伴うため、誰でも受けられるわけではなく、重い心疾患がある患者は受けることができない。

 感染症に罹りやすい糖尿病患者であれば、インプラント周囲炎を起こしやすいといわれている。また、術前の周病治療は必須だ。

 そのため、糖尿病や貧血などを調べる血液検査、骨の厚みを調べるエックス線検査、CT検査といった術前検査を行う。

 しかし、2019年に公表された消費者センターの調査結果によれば、手術前にCT検査を受けた人は6割ほど、特に検査も質問もなかった人は2割程度だった。

「安全な手術のためにはCT検査が有効ですが、義務ではありません。歯科用CTを持たず、インプラント治療を行っている歯科医院もあるのが実情です」

 2007年には事前のCT検査をしない歯科医院で、70代の女性のインプラント手術中に誤って血管を傷つけてしまい、出血が止まらない状態になったすえ、患者が死亡するという事故が発生した。

「エックス線ではわからない骨の形態や、骨の量の正確な情報の確認も必要なので、インプラントをするならCT検査をする歯科医院を選んで」

 骨が薄い上顎はインプラントが突き抜けて炎症が起きるリスクがあり、下顎は神経を傷つけて麻痺が出る可能性も。

「神経や動脈の位置などもCT検査で確認ができるので、安全な治療には欠かせないと考えています」

 また、歯科医の中には、インプラントを入れるだけで満足してしまう人もいる。4割ほどの人がその後のメンテナンスを受けていないというアンケート調査もある。

「インプラント治療は入れてからがスタートです。一般的には30年以上、持つとされていますが、これはきちんとメンテナンスを行ったうえでの寿命。

 より長く、良い状態で付き合っていくためには、患者さん自身のケアと定期的な検査や石の除去などのメンテナンスが欠かせません。長期的にフォローすることも、歯科医の重要な技術のひとつになります」