トンデモ条例ではなく、地元愛あふれる条例を!

「社会的に問題がある条例が制定される原因は4つ考えられます。1つ目は議員の選定に問題がある場合。特定の利益団体から支援や圧力を受けている議員であれば、歪(ゆが)んだ条例を作る可能性がある。

 2つ目は、議論の不足と市民のコンセンサスやパブリックコメント(意見公募)の不足。議論のプロセスが不透明な場合です。

 3つ目は、専門知識の不足。そもそもその分野に明るくない人たちが、条例案を作って、基本的な知識が不足したまま、あるいは社会情勢を把握もせずに条例を作った場合、後で世論や市民から反発を受けてしまう。

 4つ目は、地域社会や特定のコミュニティーの中で、思い込みがある場合。子どものゲームは平日60分以内、夜9時以降はスマホ禁止と決めた香川県のネット・ゲーム依存症対策条例などがそうです。行きすぎた思い込みが変な条例を生んでしまう」

昨年は「ゲームする自由の侵害」として大学生と母が県に損害賠償を請求し、棄却された ※写真はイメージです
昨年は「ゲームする自由の侵害」として大学生と母が県に損害賠償を請求し、棄却された ※写真はイメージです
【写真】“トンデモ条例”に不快感を示す『翔んで埼玉』出演のGACKT

 埼玉県の事例は、すべてが当てはまるようにも思える。

「本来、条例は国の法律に違反しない範囲内で、地方自治体が比較的ゆるく、自由に決められる地域密着型のもの。香川県のゲーム条例なども、そもそもの目的は悪くない。

 ただ、個人の領域にそこまで県が口をはさむことなのかという疑問はある。埼玉県のトンデモ条例の場合も、虐待禁止という目的が現実的な方策に結びついていない。

 一方、各地の条例を見ていくと、青森県内の自治体のりんごまるかじり条例朝ごはん条例など、一見、変なものがある。でもこれらは、地産地消や消費者保護を目的としている点において、トンデモ条例ではなく、ゆるキャラ的な、愛すべき条例なんです」

 京都市には、通称「日本酒で乾杯条例」があり、この条例によって京都市内の日本酒の売り上げが何割か上がったことが確認されているという。乾杯条例は京都を火付け役に今では全国に広がり、地場産業の振興と魅力の発信に役立っている。

※写真はイメージです
※写真はイメージです

「個人的には大阪府の泉佐野市の名物、ワタリガニの普及の促進に関する条例が好きです。条例の第5条に、“写真を撮るときはワタリガニポーズをして撮らなければいけない”と大まじめに書いてある。

 もちろん、ワタリガニポーズをしなかったからといって罰則はありません。憲法上の表現の自由や自己決定権を侵害しかねませんから(笑)」

「これがワタリガニポーズです」。取材時にはポーズ指導をしてくれた長嶺さん ※写真はイメージです
「これがワタリガニポーズです」。取材時にはポーズ指導をしてくれた長嶺さん ※写真はイメージです

 実情に合わない海外の条例を持ってくるのではなく、その地方自治体ならではのゆるい条例を作るほうが地域を明るくする。

 埼玉県議会にも、子育て世帯が逃げ出すトンデモ条例ではなく、埼玉のゆるキャラ、コバトンのように“ゆる~く愛される条例”を作ってほしいものだ。

コバトン ※写真はイメージです
コバトン ※写真はイメージです