悪徳ブリーダーが暗躍する危惧
「どの犬種にも言えますが、遺伝性疾患を可能な限り出さないブリーディング努力が欠かせません。コイケルは少ない頭数から数を増やすために、近親交配が避けられませんでした。近交度が高いとあらゆる疾患にかかりやすいことが知られているため、オランダのコーイケルホンディエ協会でも、血統と遺伝病の管理を徹底しているのです」
(宮田さん)
米国で犬種公認に時間がかかったのも、コイケルの健全性を守るためだろう。
オランダで明らかになった情報によると、コイケルは、1歳までに発症して全身麻痺に至る遺伝性壊死性脊髄症(ENM)や、血液の凝固異常を起こすフォンビレブランド病(vWD)にかかる可能性があるという。
「当犬舎では、遺伝子検査によりそれらの遺伝病の因子を持っていないコイケルだけで、ブリーディングをしています。日本のコイケルの有名犬舎でも同様で、人気犬種にするためにブリーディングをしているのではなく、歴史と伝統のあるコイケルをこよなく愛し、健全なコイケルを守るために力を尽くしているのです」(宮田さん)
しかし、今回の大谷フィーバーで、いわゆる悪徳ブリーダーと呼ばれるような営利目的に走る繁殖業者が、コイケルがかかりやすい病気に対する管理をせず、乱繁殖をする恐れもある。悪徳業者の飼養施設では、妊娠犬や子犬がケージに閉じ込められたままで運動や日光浴もさせてもらえないケースも多数確認されてきた。遺伝性疾患だけにかかわらず、飼育環境が原因で心身の健康に問題を抱える犬が全国に出回ってしまうと、犬も飼い主もつらい思いをすることになる。