そして、生活をさらに良くしていくために、月に1度、“じぶん会議”を行う。
「靴の数を減らしたいといったたわいもないことから、老後のお金のことまで、具体的に困り事や不安なことを書き出して解決策を練っています。
生活を見つめ直し、自分らしいシンプルな暮らしを続けることに役立つだけでなく、これからを考えてワクワクできる時間なのです」
きんのさんは、団地への引っ越しを機にお金の使い方も見直し。引っ越し代やリノベーションで貯蓄の大部分を使い果たし、老後資金の不足に気づいてから“月12万円のプレ年金生活”を遂行している。
「母の生活を見ていると、女性が年金だけでひとり暮らしをするのがいかに厳しいかわかりました。母には私がいますが、おひとりさまの私に生活費を補填してくれる人はいません。
思えば、マンションのローンがなくなり、居住費がグッと抑えられたことも大きいですが、気力も体力もある50代のうちからコツコツ貯め、コンパクトな予算で暮らせるよう準備をしておこうと思っています」
月12万円で過ごすきんのさんの1か月の内訳
・住居費…………2万円
・食費……………2.5万円
・教育娯楽………2.5万円
・水道光熱費……1.1万円
・保険・医療……0.8万円
・交通・通信費…1.5万円
・衣服類…………0.6万円
・その他…………1万円
楽しむこと、学ぶことは生きがい。教養娯楽費はしっかり確保。その他の1万円が心の余裕を生む。
老後を見据え、お金をどう有意義に使うか
300円の予算でお弁当作りをしたり、3000円以内で日帰り旅に出かけたり。出費を抑えながら生活を豊かにできる方法を模索して楽しんでいる。また、お金をかけず簡単に作れる健康的な料理のレシピ集も作成。老後の生活に活かす予定だ。
「お手頃でも栄養価が高い旬の食材を選んだり、外食はせずとも、ちょっとリッチな食材をお取り寄せして、“おうちレストラン”の気分を味わったり。
お金がないから使わないのではなく、いかに有意義に使うかを常に考えます。お金に働いてもらうため、投資も行っています」
一方、団地に引っ越すきっかけとなった母親との関係は相変わらず。朝食を用意したり、仕事の後に母の部屋に立ち寄って安否確認をするなど、“スープの冷めない”近距離別居で、干渉しすぎず見守りを続けている。
「80代になった母は、足腰が弱くなり、認知機能の衰えが目立つようになりました。些細なことがスムーズに行えないこともしばしば。散らかった母の部屋を見て、イライラしてしまうこともあります。
でも、今の母の姿は未来の私の姿。それを心にとどめて、できるだけ母の不安に寄り添っていきたいと思います。とはいえ、老後の暮らしばかりにとらわれるのは悲しいもの。
まずは今の自分が快適でワクワクできる空間を大切にすること。そうすれば、いつでもどんな場所でも豊かな気持ちで過ごせるはずです」