かもめんたる・岩崎う大が、注目のお笑い芸人の今後を予想する連載企画。今回の芸人はカナメストーン。
テレビでも活躍する人気若手芸人にも引けを取らない
本日紹介したいのはマセキ芸能社の漫才コンビ、カナメストーンです。彼らは知名度こそまだ低いですが、芸人からの人気が高く、僕も大ファンのひとりです。
彼らを初めて知ったのは何年か前の深夜のネタ番組で、そのときの漫才にとても惹きつけられました。あんまりネタっぽくなくて、しっかりツッコミとボケが会話し、言い争っていて、それがちゃんと面白かったんです。
音楽で例えるなら、歌詞やメロディーよりも、その場での彼らの演奏の力に惹きつけられるようなイメージです。そのころは、僕はコントしかやっていなかったのですが、きっと漫才師からすると同業者にこんな雰囲気の漫才をするコンビがいると怖いだろうなぁと思ったのを覚えています。
あれから数年たち、彼らをテレビで見る機会はまだ少ないですが、ライブシーンでは確固たる人気を獲得していて、このコーナーでも紹介した、真空ジェシカやママタルトなどのテレビでも活躍する人気若手芸人に引けを取りません。
ツッコミの東峰零士とボケの山口誠は、中学校からの同級生で、茨城県から上京して十数年も木造の一軒家に2人で暮らしています。
そんな2人の生活を知ると、みなさんも応援したくなると思います。理由は、彼らが健気に苦労しながら芸を磨いているから……ではなく、彼らの生活が楽しそうなんです。もちろん売れない若手芸人ですからお金はあまりありません。
でも、2人で飯に行ったり、映画を見に行ったり、先輩に飲みに連れていってもらったり、ネタを考えてライブでウケてと、彼らの生活は本当に楽しそうです。
さて、なぜ僕が彼らの生活にそんなに詳しいかというと、彼らのラジオ番組「カナメストーンのカナメちゃん村」(Podcast、Spotify)のヘビーリスナーだからです。
長年の友達でもあり、相方同士でもある2人の会話は、きっと普通の社会生活を送っている人からしても、他の芸人からしても憧れの対象で、一度聴けばあなたも番組のファンになること間違いなしです。
長い青春の中にいる売れない2人がケンカもせず同じ夢に向かって仲良く共同生活を送っている世界は、まるでファンタジーのような尊さにあふれているともいえます。
毎年2人はM-1グランプリに挑み、予選で惜しくも敗退していて、ツッコミの零士はとても熱血漢なので、ふがいなさから涙することもあります。
普段はサイコパス風な山口もそんなときは、それをイジるでもなく受け止めます。
そして、2人そろって、
「俺ら絶対、イケるよ!」
とすぐに来年に向け切り替えます。2人は芸人である前に人間なのです。そんな彼らが面白くなければ話になりませんが、彼らは間違いなく面白いんです。
そして、明るい。カナメストーンを面白くないという芸人はいないでしょう。もちろん2人にはお笑い芸人として売れる夢があるでしょうが、2人の夢は2人でお笑いをやることなんです。
2人の夢はある意味すでに叶っているのです。それを2人はしっかり謳歌していて、その姿が彼らを支える多くのファン、そして仲間の芸人たちの心をつかんで離さないのでしょう。
M-1グランプリのラストイヤーまでのタイムリミットはわずかです。大会に関係なく売れるポテンシャルのあるコンビですが、僕は彼らが大舞台で輝く瞬間を見たいです。
きっとそのときの輝きは日本中を元気にするパワーに満ちていることでしょう。
岩崎う大 1978年東京都生まれ。早稲田大学卒。かもめんたるとして槙尾ユウスケとコンビを結成。キングオブコント2013年優勝。お笑い芸人だけでなく、脚本家、放送作家、漫画家として多彩に活躍中