ただ、先にその女性に目をつけたのは寺山さんだった。
「入学式で声をかけてから、寺山さんはすぐにラブレターを渡したのです。女性は“応えられない”と断るも、熱烈なアピールを続けました。女性は寺山さんの見舞いにも訪れますが、寺山さんが“僕は寝てても君は来る。だから僕が好きなんだ”との言葉を聞いて行くのをやめたそう(笑)。ほどなくして、山田さんもその女性と知り合うのですが、寺山さんが恋していることを知る山田さんは、惹かれつつも明確な恋心を口にしなかったそうです」
“夫としては95点”
時は過ぎ、寺山さんは売れっ子に。山田さんは助監督を経験し、脚本家として頭角を現していく。一方、2人が恋した女性はというと、後にテレビ朝日となるテレビ局のアナウンサーとなった。
「名前は和子さんというのですが、山田さんと結婚するんです。ふたりは大学の行事で距離を縮め、卒業後に交際へと発展。3人の子どもに恵まれ、幸せな家庭を築きました。和子さんは雑誌インタビューで山田さんについて“夫としては95点”と高く評価していましたよ」
寺山さんは病に倒れ、47歳で急逝。山田さんも晩年は、脳梗塞で倒れてから、施設に入居。穏やかな日々を過ごす中、悲しみに暮れることもあった。
「和子さんは、2021年12月に亡くなられました」(テレビ朝日OB)
ライバルであり親友だった寺山さんが逝き、最愛の妻にも先立たれた。名脚本家は、その“死”に何を思ったのか。
「寺山さんは、亡くなる少し前に山田さんと連絡を取り、何度か会っていたそうです。和子さんも一緒に、充実した時間を過ごしたそうですよ」(前出・文芸誌編集者)
きっと今は、謳歌した青春を3人で議論して─。