「母親として私はこの子に何も出来ていない」
つらい状況の中でも、彩乃さんの声色は決して暗くない。なぜなら彼女には“心の救い”があるからだ。
「治療をするにあたり、心の救いは、夫と娘とのテレビ電話でした。面会が一切ダメという環境で、精神的にもつらくなるなか、毎日のテレビ電話が唯一の楽しみでした。この手で娘と夫を抱きしめたい。成長する娘を夫と一緒にそばで見守っていきたいと思えたんです」
今は数日間の入院と退院を繰り返しながら分子標的治療をしている彼女。家に帰ってきたときに少しずつ成長している娘を見て、ふと思うことがある。
「“母親として私はこの子に何も出来ていない……。私は、ただ、抱きしめたり、遊べる時は遊んで、ママはりずの事、大好きだよ愛してる”って、毎日伝える事しか出来ません」
無力感に苛まれることもあると話す彩乃さんだが、彼女は生きることを諦めない。力強くこう話した。
「最初はいっぱい考えました、何故、私が……? やっと子どもを授かって、今からやりたい事、いっぱい思い出も作って、辛いことも悲しいことも幸せと思える毎日が待っていると思ってました。病気が発覚して、生活が一気に変わってしまった。でも、とにかく出きる事・治療法があるならば、私はなんでもする。少しでも長く生きて家族との時間を過ごしたい。そのためにいろんな情報を得て、できることはなんでも試したいんです」
最後に、彼女から記事を通して伝えたいこと記す。
《つらい副作用も、メンタルが弱ってる時も、夫と娘の存在、家族、応援してくれる友達が頑張る力をくれます。選択に迷った時は、後悔がないように、生きていきたい。そして、ほんとに毎日、夫がサポートしてくれる事が私の支えです。ほんとにありがとう、ほんとに愛しています!》
首藤彩乃さん●1990年生まれ。沖縄県出身。2023年に女児を出産。産後ステージIVの横行結腸癌 多発性肝臓転移が発覚。新しい治療法や病院を現在も探しながら、闘病生活をSNSで発信している。Instagram(@a19900914)
(取材・文/佐々木一城)