人口減少も不動産は高騰
日本の人口は14年連続で減少し続けており、世帯数も今年度をピークに減少に転じると予測されている。にもかかわらず不動産は高騰し続けており、明らかな矛盾が生じている。349万戸もの空き家を有効活用することができれば、このひずみの解消に大いに役立つだろう。
「そのためにはまず空き家の所有者が、専門家や自治体の空き家対策窓口に相談するなど行動を起こす必要があります。実家に愛着があるなら無理に売却せずとも、賃貸や民泊、別荘などさまざまな活用法があります。放置したままでは家は朽ち果てるばかりで、維持だけでも莫大なコストです。固定資産税はもちろん、火災保険や公共料金の基本料、庭木の剪定費用、最低限のリフォームも必要で、これが10年、20年と積み重なれば総額で2000万円ほどの出費になることも珍しくないのです」
実際にタレントの松本明子は両親亡きあとも香川県の実家を25年間維持し続け、1800万円もの費用が発生したことを和田さんは著書で綴っている。
「こんな田舎の物件なんて売り手も借り手もいない、と思い込んでいる方も大勢いらっしゃいます。ですがコロナ以降、暮らし方や働き方が変容し、地方の魅力は大いに見直されています。さらに日本の空き家は非常に状態がよく安価なため、“AKIYA”として外国人からも注目されているのです」
和田さんはYouTubeを活用して、空き家の情報を広く発信している。視聴者の約10%は外国人で、実際にハワイ在住のアメリカ人が奈良県の空き家を購入したり、カナダ在住の邦人が高知県の空き家を購入したりといったケースもあるそうだ。
「外国の方は特に、日本の自然美に価値を見いだしています。近くに温泉があったり、川の水をそのまま飲めたりといった環境は、一等地そのもの。都市部よりも地方のほうがより大きな可能性を秘めていると僕は思っています」
私たち消費者にも意識改革が必要だ。日本人はいまだに新築志向が根強い。国土交通省の調査では、日本の住宅寿命が平均30年であるのに対し、アメリカでは55年、イギリスでは77年とおよそ倍。欧米では古い家をリフォームしながら長く住み続けることが当たり前で、築年数を経るごとに物件の価値が下がる現象は日本特有のものだ。
「建築資材の不足が続く影響で、新築物件は減少し価格も高騰しています。築40年の空き家でも500万~1000万円程度でリフォームすればずいぶん快適に住めますし、新築に比べ建築コストも低くすみます。また、自分好みにアレンジできる楽しさもあります。中古物件は今後ますます見直されていくでしょう」
空き家の有効活用はSDGsの実現や地域活性化にもつながる。個人の意識変革と行動次第で、負の遺産が有効な資産に変わる可能性は大いにありそうだ。
<取材・文/植木淳子>