とはいっても、「何をどれだけ用意すればいいか」という質問に対しては、「正解はない」という。
「農林水産省が推奨する食品備蓄は、災害対策として最低3日~1週間分となっていますが、あくまで目安。一人ひとり好みが違えば、食べられる量、回数も違います。備えはまず、自分のことを知らないとできません。自分や家族のことを理解した上で、フェーズフリーの考え方で備えるといいでしょう」
家族が食べられるものを見つけておくことが大事
フェーズフリーとは、「日常(平常時)」と「非常時(災害時)」という2つのフェーズをフリーにするという防災の概念。日常で利用する身の回りのものや食べ物を非常時にも活用することであり、ローリングストックはフェーズフリーの手段のひとつといえる。
「ローリングストックでは“備えること”を意識しがちですが、“消費すること”にも目を向けてください。食べたいと思わない食品は、ローリングストックには適していません。まず食べて、好みに合えば買い足す。そうすることでローリングストックが習慣化していきます」
では、具体的にどういった食べ物がローリングストックに適しているのか。非常食として広く認知されている長期保存食などはどうなのだろう。
「レトルトや缶詰などの常温保存可能な食品を置いておくことで、食料を確保できているという安心感が得られるのは大事なことです。また、アルファ化米やパンの缶詰など長期保存可能な食品もあると安心です。わが家は普段使いのものと長期保存可能なもの、どちらもすべて味見して家族が好きなものを置くようにしています」
やはり、災害時の食事は心の安定をもたらすものが理想。味や調理の仕方がわからない食品は、いざ口にする際にストレスになりかねない。
「食べられるものを見つけておくことも大事です。サバ缶が苦手ならば焼き鳥缶はどうか。缶詰が苦手ならばレトルトはどうかと、いろいろ試食してみること。最近は、長期保存食も種類が豊富になった上、防災コーナーが設けられているスーパーなどで入手しやすくなりました。私のお気に入りは『まつや』のぞうすい(左)。味も良く調理も簡単、備蓄しやすい形状になっているのでオススメです」
備蓄に関して万全となっても、災害時に使える状態にしておかなければならない。そこで、普段から心がけておくべき3つの項目があるという。
「“家族に見える化”“食べ方の見える化”“賞味期限の見える化”。この“3つの見える化”を推奨しています。わが家では定期的に、賞味期限パトロールを行っています。すると、賞味期限だけでなく、家のどこに何があるのかを家族全員が把握できます。また、災害食を野外に持ち出して“防災ランチ”を行うことも。電気、ガス、水道の止まった状況を疑似体験できるので、食べ方を工夫するようにもなります」