スーパー南海地震が起きると、大阪湾も津波に襲われる。専門家によっては、地震発生からわずか10分で到達するとの指摘もある。
「大阪万博の会場は大阪湾に浮かぶ人工島です。東京でいう“夢の島”と同じように、もとはゴミ処理場として埋め立てた場所で、地盤がもろい。そのうえ会場へアクセスするには夢舞大橋を渡るか、夢咲トンネルを通る2つのルートしかないのです。
大阪府は1日最大22万人の来場者を見込んでいますが、大地震が起きて道路が寸断されたら、大勢の被災者は孤立してしまう。運よく道路が使えたとしても大阪市内の液状化は必至ですから、逃げ場がない。万博後にカジノを誘致どころの話ではありません」
来たるべき大地震を生き残るには?
自然現象である地震を防ぐことは不可能。だが地震や揺れの大きさが、必ずしも被害の大きさに直結するわけではない。高橋教授が強調する。
「地震と違って、災害は防いだり減らしたりすることが可能です。例えば災害時の避難対策として、高層ビルや耐震性にすぐれた建物の1階入り口を開けて、地域に開放するように決めておく。誰でも逃げ込める状態にしておくのです。
そのためには、災害が起きる前の準備が肝心。住民や地域の理解を得られるよう、事前に同意や協力を取りつけておく必要があります」
自宅で今日からできることはある。島村教授のおすすめは、こんな方法。
「ベッドの下に歩きやすくて底の厚い靴を置いておく。ガラスが割れても外に逃げられます。また、夜中の地震に備え、懐中電灯を枕の下やシーツの下に入れておく。これなら激しい揺れでも飛んでいくことはありません」
災害は待ってくれない。地震大国だからこそ得られた知見と教訓を、今こそ生かすことが求められている。
この人に聞きました……島村英紀教授●地震学者、武蔵野学院大学特任教授。『地震と火山の島国-極北アイスランドで考えたこと』など著書多数。
この人に聞きました……高橋 学教授●立命館大学環太平洋文明研究センター特任教授。災害史に詳しく、地震についてさまざまなメディアで解説。