躁うつ病、認知症……病気が原因の場合も
では、家族が強引に物を捨て始めたらどうすればよいのか。益田先生は、周囲との会話の必要性を訴える。
「捨てている本人は、捨てることに執着している、目的化していることには客観的に気づけません。どうして何もかも捨てたいと思っているのか、その根本にあるものを聞いてみることが大切です」
捨てたいと思っている理由を共有できて、納得できれば捨ててもいいし、会話の中で本人が抱える本当の悩みが見えてきたら、解決に一歩近づいたといえる。
「それでも捨てたい欲求が収まらず、どんどん捨てていくようだったら、別に原因があるかもしれません。例えば、ひどい更年期障害や躁うつ病。
“代償行為”として急激に大量の物を捨てるのは、逆に不要なものも捨てられない“ため込み症”と同じ発達障害の特徴ですから、その可能性も捨て切れません。
親世代にその兆候が表れたなら、認知症の疑いも。たかが“物をたくさん捨てているだけ”と思わず、該当する病院に相談をするのも選択肢の一つです」
もし、自分が捨てすぎているかもと心配になったら、大きな物を捨てる前に、捨てないメリットを考えてみること。それでも、“捨ててスッキリしないと気がすまない!”が続くようであれば、メンタル不調からの行動である可能性がある。
日常で抱えた悩みは片付けで解決しない
もちろん、物を持ちすぎないことは、部屋を美しく保つ意味でメリットはある。思い切って物を捨ててリフレッシュすることも悪ではない。
ただし、その爽快感で不安感は除去できない。それを繰り返しても何かが変わるわけではなく、捨てすぎはデメリットが多いと理解すべきだ。
「人間関係や仕事、家庭のことなど、抱えているストレスは何か一つを変えたからといってキレイになくなるものではありません。小さく重なった石を一つひとつ取り除いていくように、向き合っていくことが大切なのです。
“嫌だな”と思う現状があったとして、それをすぐに打破できないとしても、そんな自分を責めずに許して、長い目で見ることが大切だと思います」
取材・文/河端直子