『ダンシング・ヒーロー』は“遊んでる”からつくれた!?
枚挙に暇がない三浦さんの仕事だが、代表作のひとつといえるのが、荻野目洋子『ダンシング・ヒーロー』だろう。今でこそ「バブリーダンス」の印象が強いが、スタンドマイクで歌う姿はどこか“夜”を感じさせる、アイドルの歌としては画期的な作品だった。
「あの曲の振り付けは、たぶん平ちゃん(荻野目が所属するライジングプロダクション社長・平哲夫氏)から直接話が来たのかな。俺が『振付師の中で一番遊んでる』から頼もうと思ったって、聞いたことがあります(笑)。本当かどうかわからないけど、確かに遊んでるんで(笑)そういう平ちゃんのセンスは、昔から尊敬してますね」
レコード会社の担当者を交えて話した結果、「見たことがないものをやりたい」という話になったとか。
「当時はみんなマイクを持ってただ歌っていて、積極的に踊る歌手ってのがほとんどいなかったじゃない。だからスタンドマイクで踊ることにした。最初にスタジオでこの振りを見た平ちゃんは、『悪いけど(振り付けを)全部変えてくれ』って言ったんですよ。彼にとって『見たことないもの』すぎたんだと思う」
だが結局、振り付けは変えることなくそのままでOKとなり、『ダンシング・ヒーロー』は荻野目のターニングポイントにして代表作となった。
現在、活動休止中の氷川きよしにも、三浦さんが振り付けを手がける曲がいくつかある。氷川には、演歌だけではない新しい表現方法についてもアドバイスをした。
「印象的なのは、『限界突破×サバイバー』のとき。最初の衣装のボトムが中途半端な丈で、俺から見て“ちょっとなあ”と思った。本人は脚がきれいで自信もあるのに、もったいないな、と。そこで『目いっぱい脚を出したほうがいいぞ』って。結果、いい方向にいったよね」
限られた時間の中で、表現者たちがもっとも映える動きやファッションを見いだし、方向性を示す。それこそが振付師の枠に収まらない、三浦亨の“すごさ”でもあるのだ。
「廊下で5分しかなくても、できるだけのことをやります。カッコいいこと言いますけど、引き出しをいっぱい持ってないといけない。踊りがどうあれ、彼らの魅力が引き出せればいい、そう思っています」
現在は「YOSAKOIソーラン祭り」の振り付けなど、ボランティアに近い形での仕事を受けることも多いという。
「『何かやりたい』って人がいたら、そういう人をどんどん手伝いたいですね。『大御所だからギャラが高い』なんて思われちゃってるんだけど(苦笑)、ソーラン祭りなんて運営側に『コスパがいい』って言われてますから(笑)」
仕事も夜遊びもまだまだ現役! さすがのレジェンドである。
取材・文/高松孟晋