デビュー前は芸能界入りに大反対だった母も、仕事を続けられるよう、力になるから、と背中を押してくれた。
結婚後間もない渡辺家で起きた「赤いウインナー事件」
「夫婦共に忙しい時期で、私なりに大変なことはあったけど、協力してくれる人がいっぱいいたんです。ほかの仲間と比べたらずっと恵まれていた。子育ての不安も、母や義理の両親に相談していました」
周りに助けられたという郁恵さんだが、特に大きかったのは、やはり徹さんの存在だった。
「主人はいつも楽天的で、『おまえはこれでいいんだ』と言ってくれたから、自信を持てた。肩に入っていた力も抜け、気持ちもすごく楽になりました」
「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー2021」の受賞など、芸能界きってのおしどり夫婦として知られていたふたり。仲むつまじい姿をテレビ番組でよく見かけていたが、家では夫婦ゲンカも多かった。
「まぁ意見が合わない! 何なんでしょうね(笑)。結婚すると『違う、違う、違う!』って戸惑うことばっかり」
ふたりは考え方の違いでケンカになることも多かったが、そんなときも「もういいよ」とごまかすことなく、お互いに精いっぱいぶつかった。たまにはすぐに仲直りできないような行き違いもあったが、仲直りのきっかけは、いつも「一緒に寝ること」。
「私たちは夫婦の寝室は一緒という考えなんです。ケンカして仲直りのきっかけをつかめないときも寝室が一緒だと気まずいけれど、同じ場所で一日が終わることで“休戦”するというか。目が覚めて次の日が始まると『おはよう』って言葉で、気持ちが切り替わってリセットされるんです」
数多とあった夫婦ゲンカだが、特に記憶に残っているのが、結婚後間もない渡辺家の食卓で起きた「赤いウインナー事件」。ウインナーが好きな徹さんのために、郁恵さんは“高級な”粗挽きウインナーを朝食に出していたが、徹さんが突然怒り出し、「家出してやる」と言い放った。
「最初、びっくりしちゃって。『俺は赤いウインナーが食べたいんだ!』って言って家を出ていって。『何言ってるの? この人……』って」
実は、徹さんはそれまで何度か自分の好みをやんわりと伝えていたが、郁恵さんはそれに気づいていなかった。
「主人は繊細なところもあって、人の言葉の裏側を考えちゃうんだけど、私は裏表のない典型的なB型。遠回しに言われても困るし、別々に育ってきた血のつながらない他人同士が暮らす難しさを悟りました(笑)」