遺体からできた土でまさかの自然栽培
2023年、タニシさんは新たなチャレンジを行った。
「住人の男性が孤独死した一軒家。こちらもリフォーム前の1か月限定で借りました。さまざまな残置物がある中でひときわ目を引いたのは、部屋の一角に盛られた、人形の土でした」
この物件にも、遺体のあった部屋をきれいにする特殊清掃はまだ入っていなかった。男性は発見されたときすでに白骨化しており、警察は遺骨を回収しただけで、家の中には触れていない。この土の正体は、一体……?
「おそらく“元人間”なんですよ、この土。つまり、遺体の肉を食べたネズミや虫の糞を、バクテリアが分解したもの。試しにこの土の成分を分析してもらったところ、動物などの排泄物や死骸が蓄積してできた土壌と酷似しているということでした。しかも、栄養価がすこぶる高いらしくて」
タニシさんは、なんとこの土を使って、作物を育てることにしたのだ。選んだのは短期間で育つ野菜を数種類。
「中でもきちんと成長したのが、カイワレです。もちろん食べましたよ。ふつうのカイワレより味が濃く、ピリッと辛くて舌が痛くなるほどでした」
幽霊の帰宅!? インターフォンに映る黒い人影
怪奇現象が毎日起きるわけではないという事故物件。逆にいえば、“奇妙な出来事”が起きるときもある。
「昨年契約した17軒目の事故物件は、香川県のマンションの一室です。人が亡くなっただけでなく、この部屋に入ったリフォーム業者の人がナゾの黒い影を目撃したという触れ込みがあって……」
その“ヤバさ”は、お祓いに呼ばれた祈祷師ですら「何をやっても除霊は無理」と匙を投げたほど。それほど強い念を持った何かが棲みついている部屋なのだ──。その黒い人影は、風呂場から現れるという話だったが、初めのうちは何も起きなかった。しかし半年後、タニシさんはついに、奇妙なものを目撃することに。
「その部屋には、チャイムを鳴らした人物を画像で記録しておくタイプのインターフォンがあるのですが、そこに覚えのない不可解な履歴が2つ、残っていたんです。ひとつは、訪問者が誰も映っていない画像。もうひとつは画面左端に黒い人影の映り込んだ画像でした」