過去3年間、新型コロナの冬場の流行は、1月半ばから2月初旬をピークとしていた。今冬も当初は例年通りの展開を示していたが、ここに来て状況は変わった。
JN.1とはどんなウイルスか
それは新たな変異株が出現したからだ。オミクロン株BA.2.86(通称ピロラ)から派生したもので、「JN.1」という。
昨年9月にカナダやフランス、シンガポール、スウェーデン、イギリス、アメリカなどで相次いで検出され、その後急拡大した。東京都のデータによると、1月8~14日の新規感染者の約6割は、JN.1によるものだ。
昨年12月、世界保健機関(WHO)は、JN.1を「注目すべき変異株(VOI)」に認定した。3段階のうちVOIは要注意度で2番目にあたる。
JN.1の主な症状の詳細については後述するが、発熱、倦怠感、鼻水、咳などで、これまでの従来株と変わらない。ただし、従来株と比較して免疫を回避しやすい。これがJN.1が急拡大した理由だ。
この点については、すでに複数の臨床研究が報告されている。今月、東京大学医科学研究所を中心とした研究チームが、イギリス『ランセット感染症学』誌で研究結果を発表した。
JN.1の親株であるBA.2.86は、2022年の流行の主流株で、従来型のXBBやBA.2と比べて30以上の変異があり、免疫を回避しやすい。JN.1はBA.2.86の変異に加え、さらにLeu455Serという変異と非スパイクタンパクに変異が加わり、免疫回避能力が高まっている。
現在、接種が進んでいるオミクロン株(XBB.1.5)のワクチンは、JN.1の親株であるBA.2.86に対して有効で、重症化の予防が期待できる。ただ、JN.1に関する効果は限定的だ。
ワクチンの効果は、感染予防と重症化予防という2点で評価されるが、現行のXBB.1.5ワクチンを接種しても、JN.1の感染はあまり予防できないと考えたほうがいい。重症化予防効果については、まだ評価できない。
では、JN.1に感染した場合の重症度はどうなるだろうか。